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ヒトツタリナイ~米川君の秘密~

●5人 ●50〜60分程度

●あらすじ

理科準備室の人体骨格標本が行方不明に。その行方を探すハメになった化学部員4名は、夜の公園で意外なものを見つける。果たしてガイコツはどこに…。ちょっと学園ホラーっぽい感じの台本。

●キャスト

ヒヤマ
ツチダ
キノシタ
ミズノ
米川

●台本(全文)

中央奥にドア。

真っ暗な中、開いたドアの向こうにガイコツ浮かび上がり、消える。

////////////////////

明るくなって。

理科室。

ミズノ(二年、化学部部長♀)、キノシタ(二年、副部長♂)、ツチダ(一年部員♀)、ヒヤマ(一年部員♂)の四人が、机を囲み、真剣な雰囲気で話し合っている。

ヒヤマ  つまり、あれでしょ。早い話、オレたち化学部が疑われてるってことでしょ?

ミズノ  …そういうわけじゃないけど。

ツチダ  でも、部長、先生に呼び出されたんですよね。「お前たち、心当たりないか」って。

ミズノ  …うん。

ツチダ  だったらやっぱり、私たち、疑われてるんじゃないですか。

ヒヤマ  ていうかさぁ、ズバリ、ホネカワでしょ。疑われてんのは!

キノシタ やめろよ。そういうのは。

ミズノ  そうだよ。証拠もないのに、米川君のこと疑うなんてよくないよ。

ヒヤマ  でも、部長だって、内心ホネカワが犯人じゃないかって思ってんじゃないんですか。

ミズノ  そんなことないよ! 犯人だなんて。盗まれたのかどうかだってまだわかんないのに!

ヒヤマ  そんなにムキになるところがかえって怪しいなぁ…。

キノシタ (ヒヤマの肩を押さえて)ヒヤマ、お前こそ、米川のことになるとなんでそんなにムキになるんだよ。

ヒヤマ  別に…。キノシタ先輩には関係ないっすよ。

キノシタ …ったく。お前、米川とは幼馴染みなんだろ。

ヒヤマ  …ええ、まぁ。

ミズノ  部活だって同じなんだし…。仲間じゃない。

ヒヤマ  あの、ミズノ先輩! 先輩、何かって言うと、すぐ仲間だとか、仲良くとか、そういうこと言いますけど、同じ化学部だからって仲良くしなきゃいけないんですか? そういうの逆に変じゃないですか。その部活に入ったら、部活の人全員好きになんなきゃいけないなんて、おかしいですよ。

ミズノ  …それはそうだけど。

キノシタ ヒヤマ。お前、ちょっとは部長の気持ちも考えてやれよ。三年から引き継いだばっかりで、苦労してんのわかんないのかよ。文化祭だって目の前まで来てんだぜ。ただでさえ部員少ないのに米川は来なくなっちまうし…。…そこへもってきて、この騒ぎなんだからさぁ。

ヒヤマ  …それはわかりますけど…。

キノシタ とにかく、今は内輪でもめてる場合じゃないと思うんだよ。(ツチダを見て)なぁツチダ。

ツチダ  エエ…。

キノシタ ヒヤマも協力してくれるよな。

ヒヤマ  …それは、まぁ…。

キノシタ (立ち上がって)だったらとにかく、アレを見つけようぜ。それしかないって。

ツチダ  …あの、キノシタ先輩。見つけるって…私たちで探すんですか?

キノシタ まぁ、とりあえずは…。

ミズノ  じゃあ、やろ。

ミズノ、立ち上がって、正面奥のドアを開けようとする。

ヒヤマ  …やっぱ、オレ納得いかないんすけど。

キノシタ まだそんなこと言ってんのかよ。

ヒヤマ  要するに理科室の備品が無くなったわけですよね。だったら理科室を使ってるみんなで探すべきじゃないですか。…全校生徒と理科の先生で。…それがスジだと思うんですけど。

ツチダ  …そうだよね。私たちだけで探すのって、何だか責任とらされてる感じがしてヤダな…。私たちがどうかしたわけでもないのに…。

ミズノ  ヒヤマ君やツチダさんの言うこともわかるけど…。

キノシタ (ツチダに)別に化学部だけで探せなんて言ってないよ、先生は。もちろんオレたちをうたがってるわけでもないと思う。…たださぁ、昨日、準備室に入ったのは化学部だけだから…。

ヒヤマ  化学部だけじゃなくて、ホネカワだけでしょ! だったらあいつしかいないじゃないですか、犯人は。大体、他のヤツがあんなもの盗んだりしませんよ。

ミズノ  だから、盗んだって決めつけるのはよくないって。

ヒヤマ  黙って持ち出したんだから、盗んだってことでしょ。

キノシタ 見たのかよ、お前。

ヒヤマ  見ちゃいませんけど…。昨日の状況を考えたら当然そうなりますよ…。

ミズノ  仲間を疑うなんてよくないよ。

ヒヤマ  だから、仲間仲間って、部長はいつだってそんなこと言うから!…。

ツチダ  (ヒヤマの言葉にかぶせて)私、部長や副部長の言うこともわかるんですけど、ヒヤマ君の気持ちもなんとなくわかります。米川君、最近ほとんど学校来てなかったのに、昨日の放課後急に出てきたじゃないですか。

キノシタ アア。

ツチダ  …変だなって思いました。私も。

ヒヤマ  (ツチダに)ここ覗いたくせに、オレたちがいるとわかったら、逃げるように行っちまったろ。

ツチダ  何か気まずそうだったよね。

ヒヤマ  あいつ、何でコソコソすんだよ。挨拶くらいしろっつーの。マジ、ムカつくよな。

ツチダ  …そういえばさぁ、一学期の終わりの頃、準備室にこもったことあったよね。

ヒヤマ  あった、あった。

ツチダ  (ミズノに)先輩も覚えてますよね。

ミズノ  …うん、まぁ。

ツチダ  部屋の中、真っ暗にして、アルコールランプつけて…。

ミズノ  うん。…あれはちょっとゾッとしたけど。でも、それは、何かの実験だったかも知れないし…。

ヒヤマ  どんな実験なんですか、それって! あり得ないですよ!

ツチダ  確かに米川君って、ちょっとオカルトっぽいことに興味あったと思う…。化学のこと、いつもバケガクって言ってたし…。

キノシタ それは別にいいだろ。バケガクでも。

ツチダ  でも…。

キノシタ とにかく、探そうぜ。こんなことしてたってどうにもなんないよ。

ミズノ  そうだよ。とりあえず準備室、探そうよ。

ヒヤマ  (立ち上がって)ムダですよ、そんなこと。だってあるわけないじゃないですか。アレは箱に入ってたんですよ。それが今朝来てみたら、箱だけが残ってて…。ということは、夜の間に誰かが箱を開けて、アレを持ち出したってことでしょ。探すなら準備室以外じゃないんですか。

ミズノ  でも、念のため準備室をもう一回探してみて、それから…。

ヒヤマ  あるわけありませんよ。

ミズノ  でも、無いなら無いで、きちんと無いことを確認した上で、その次に、アレがどこに行ったかを手分けして…

ヒヤマ  「どこに行ったか」? 部長今、「どこに行ったか」って言いました? ミズノ先輩は、アレが、あのガイコツが、一人で歩いてここから出て行ったと思ってるんですか?

ミズノ  そういうんじゃなくて…。

ヒヤマ  今、そう言ったじゃありませんか。

キノシタ からむなよ。ヒヤマ。

ヒヤマ  別にからんでるわけじゃありません。ただ、あのガイコツはただの骨格模型じゃないから、ひょっとしてミズノ先輩、そういうこと信じてるのかなって。

ツチダ  どういうこと? ヒヤマ君。

ヒヤマ  アレ、本物だから。

ツチダ  本物?

ヒヤマ  お前知らなかったの。有名だぜ、この話。

ツチダ  …何?

キノシタ 無くなったガイコツは、骨格標本なんだよ。…模型じゃなくて。…つまり正真正銘生きてた人間のホネだってこと。

ツチダ  (ミズノに)…どうしてそんなものが学校にあるんですか…。

ミズノ  何年か前にいた、理科の先生が置いていったらしいよ。

ツチダ  置いてった?

ミズノ  私も聞いた話だから、はっきりしたことはわからないけど、その先生が辞めるときに、学校に寄付したんだって。

キノシタ 寄付っていうのかなぁ〜。「これを私だと思って大事にして下さい」とか言って、箱に入れたガイコツを持ってきて、その後、突然辞めたらしいよ。確か七年前。

ミズノ  とんでもない置きみやげよね。

キノシタ …で、他の先生とかも結構扱いに困っちゃって…。

ツチダ  …へぇ。

ヒヤマ  で、結局、箱ごと準備室にしまっておいたってわけ。

ツチダ  何かキモいね。

ヒヤマ  アア。

ツチダ  (ちょっと考えてミズノに)でも、そんな厄介なものなら、出てこなくてもいいんじゃないんですか?

ミズノ  うん、まぁね…。

キノシタ いや、逆だよ。

ミズノ  逆?

キノシタ うん。いわくありげなものだからさぁ、理由もなく無くなったってことが校内に広まったら、どんなウワサになるか、しれたもんじゃないだろ。

ミズノ  そっかぁ。そうだよね。

キノシタ (ヒヤマに)だからさ、この忙しいときに、こういうこと、みんなにさせるのも心苦しいんだけどさぁ、協力してくれないかな。

ヒヤマ  …そりゃぁ協力はしますよ、もちろん。(間)けど、分かれませんか。

キノシタ どういうふうに。

ヒヤマ  せまい準備室をなにも四人で探すことないと思うんですよ。だから、手分けして、別のところを探す人もいたほうがいいと思うんです。

ツチダ  あの…、私もヒヤマ君に賛成です。探すなら他の教室とか、学校の外のほうがいいんじゃないかって思います…。

キノシタ わかった。じゃあさぁ、オレと部長で準備室探すから、ヒヤマとツチダは他あたってくれよ。

ヒヤマ  わかりました。

ツチダ  じゃあ、行こ。

ツチダとヒヤマ、上手へ去る。

キノシタ こっちもとりかかろうか。

キノシタ、中央奥のドアを開けようとする。

ミズノ  …ゴメンネ。頼りない部長で。

キノシタ そんなことないって。ミズノさんは頑張ってるよ。

ミズノ  でも、ヒヤマ君、私が部長やるの気に入らないみたいだし…。

キノシタ ヒヤマだって悪気があるわけじゃないよ。ちょっと融通のきかないとこはあるけど…。

ミズノ  …うん。

キノシタとミズノ、ドアの奥に消える。

暗転。

ケータイの音。

上手スポット。ケータイを持ったツチダが立っている。

ケータイを耳に当て。

ツチダ  …アッ、部長。

下手スポット。ケータイを持ったミズノ。

ミズノ  どうだった?

ツチダ  あっ、ガイコツですか。いえ、全然。…あのあと体育館とか調理実習室とか探したんですけど…。

ミズノ  ヒヤマ君は?

ツチダ  あっ、彼は、学校の外が怪しいとか言って…。

ミズノ  そう…。

ツチダ  準備室はどうでした?

ミズノ  手がかりなし。

ツチダ  遅くまでいたんですか。

ミズノ  ううん、そんなには。…準備室の中だけだからね。そんなに探すところもないし…。

ツチダ  ですよね。

ミズノ  …やっぱり、学校の中じゃないのかなぁ…。あっ、ゴメンね。遅くに。

ツチダ  いえ。

ミズノ  じゃあね。

ツチダ  …失礼します。

ミズノ  アッ。

ツチダ  何ですか?

ミズノ  そういえばね。

ツチダ  ハイ。

ミズノ  一応、ほかの備品も調べてたらさぁ…。

ツチダ  どうかしたんですか?

ミズノ  一つあったんだ。ガイコツ以外にもなくなってるものが。

ツチダ  ホントに?

ミズノ  うん。

ツチダ  何がですか?

ミズノ  ヘビ。

ツチダ  ヘビ?

ミズノ  ホルマリン漬けになってたやつ。あれ見あたらないんだ。

ツチダ  ああ、あのガラスの容器に入ってた白いやつ。あれですか…。

ミズノ  うん。いつから無くなってたのかわからないんだけど…。

ツチダ  ガイコツとヘビですか…。

ミズノ  うん…。

暗転。

ケータイの音。

下手スポット。ケータイを持ったキノシタが立っている。

ケータイを耳に当て。

キノシタ ハイ。…オッ、ヒヤマか。

上手スポット。ケータイを持ったヒヤマ。

ヒヤマ  どうでした?

キノシタ ダメダメ。見つかんない。やっぱ準備室にはないな。…どこか別の場所だ…。で、お前のほうはどうだった?

ヒヤマ  オレ、一人で学校の外、調べてたんですけど…。

キノシタ で?

ヒヤマ  ちょっと気になることが…。

キノシタ 気になること?

ヒヤマ  トオルが。…そいつ、オレとクラス一緒なんですけど、毎晩、犬の散歩で公園行ってるらしいんですよ。で、公園でバッタリ会って、ちょっと話したんです。そしたらトオル、昨日の晩、公園でホネカワ見たって…。

キノシタ 米川が公園に?

ヒヤマ  エエ。しかも、何か白いもの抱えてたって言うんです。

キノシタ 白いものって、まさか…。

ヒヤマ  オレもそう思って、ガイコツかって聞いたんですけど、それは暗くてよくわからなかったって…。けど、米川と同じくらいの大きさのもので、抱きかかえるようにして歩いてたって言ってました。

キノシタ そうか…。こうなってくるとやっぱり米川かもしれないな…。

ヒヤマ  オレ、直接ホネカワに聞いてみようと思うんです。

キノシタ …そうだな。聞く必要あるかもな…。

下手上手のスポット消える。

中央にスポット。

マジックショー風のハデな音楽。

中央のドアを開けて、米川登場。

くわえたタバコを手で隠して消し、それをポケットから出したり、ハンカチに埋め込んだボールを消して、別の場所から出したり、そうした類の手品を何種類かして、客席に拍手を求めるようなポーズ。

拍手の音。

米川、納得した表情で、ドアの奥に消える。

全体、明るくなって、理科室。

上手よりミズノ、ツチダ、話ながら入ってくる。

ツチダ  先輩、聞きました。米川君のこと。

ミズノ  ううん。何?

ツチダ  今日は朝から学校来てるみたいなんですけど、昼休みにクラスのみんなに手品見せたらしいんですよ。

ミズノ  手品?

ツチダ  エエ、手品。で、そのクラスの子に聞いたんですけど、結構サマになってたらしくて、チョー盛り上がったって。

ミズノ  ふ〜ん。知らなかったな。米川君にそういう趣味があったなんて。

ツチダ  私もです。…でも変じゃないですか。

ミズノ  何が?

ツチダ  だって、たまにしか学校に来てなかった米川君がですよ、いきなりクラスでマジックショー始めるなんて…。

ミズノ  それもそうよね…。

間。

ツチダ  …先輩、知ってます? 公園の話。

ミズノ  アア、キノシタ君に聞いたよ。ヒヤマ君の友達が米川君見たんでしょ。

ツチダ  エエ、それでヒヤマ君、昼休み、米川君のクラスに行ったらしいんです。

ミズノ  で?

ツチダ  マジックショーが終わったとき、ヒヤマ君が米川君の前にスッと出て行って、「ホネカワ、お前、タバコとかボールとか出す前に、他に出すもんあるだろ」って言ったらしいんです。そしたら米川君が「何かなぁ〜。わかんないよ」とか言ったもんだから、ヒヤマ君「ホネだよ、ホネ。ホネを出せ」って。

ミズノ  ズバッと聞いたんだ。

ツチダ  けど米川君、鼻で笑って、「それはできないなぁ〜。ホネを出したら、オレふにゃふにゃになっちゃうもん」って。ドッとウケたらしいですよ、クラス中。

ミズノ  米川君、そんなこと言うんだ。

ツチダ  意外ですよね。なんかキャラ変えてきてますよね…。

ミズノ  で、ヒヤマ君どうしたの?

ツチダ  キレました。

ミズノ  やっぱり。

ツチダ  いきなり米川君につかみかかって…。でも、米川君、全然平気で、ポケットから紙を出して、ほら、何かあるじゃないですか、手品で使う紙。パッと燃えちゃうの。あれをヒヤマ君の顔の前で、パッと燃やしたんですって。そしたらヒヤマ君、「ワッ」とか言ってのけぞっちゃって…それがまたウケちゃったもんだから、ヒヤマ君、完全にキレて、こりゃ血の雨が降るぞってときに、ちょうどキノシタ先輩が来て、ヒヤマ君をとめたんで、一応その場はおさまったらしいんですけど…。

ミズノ  へぇ〜。

ツチダ  ヒヤマ君もちょっと強引っていうか、ガンコなとこあるから、よそのクラスであんまり人気ないんですよね。ホネカワ、ホネカワって言ってるのもヒヤマ君だけだし…。だから、まわりのみんなも米川君のほう応援するぞ、みたいな雰囲気になってたみたいです…。

ミズノ  米川君、いきなりクラスにとけ込んじゃってるじゃない。

ツチダ  みたいですね。

上手より、キノシタとヒヤマ。

ヒヤマ、興奮している。

ヒヤマ  殺す! あいつ、いつか絶対殺す!

キノシタ 落ち着けよ、ヒヤマ。落ち着けって!

ヒヤマ  ホネカワの野郎。バカにしやがって!

キノシタ 気持ちはわかるけど、とにかく落ち着け。

ヒヤマ  先輩、どうして止めたんですか。

キノシタ マズイだろ、あそこで暴れちゃ。

ヒヤマ  けど、そうでもしないと…。

キノシタ お前が暴れるのは勝手だけど、内輪もめで暴力事件にでもなったら、化学部の責任になるんだからな。それを忘れんなよ。

ヒヤマ  (やや冷静になり)わかってますけど…。

ツチダ  大丈夫?

ヒヤマ  アア…。

ミズノ  (キノシタに)で、どうなの?

キノシタ ああ、ホントみたいだね、公園の話は。さっきトオルってのに確認してきたから間違いないよ。

ミズノ  そうなんだ…。

ヒヤマ  (ミズノに)これでわかったでしょ! 犯人は絶対ホネカワですって!

キノシタ でも、証拠がないだろ。

ヒヤマ  こうなったら証拠はオレたちで探しましょうよ。

ミズノ  探すって?

ヒヤマ  公園ですよ、公園。公園しかないでしょ、この流れで行けば。あいつ、ガイコツ欲しくなって盗んだものの、家には置いとけなくなって…。けど、変なとこに捨てたら大騒ぎになるじゃないですか。それで困って、公園に埋めたんですよ。

ツチダ  …なるほど。なくはないわよね。

キノシタ (ヒヤマに)どうやって見つけるんだよ。

ヒヤマ  公園中掘り返してでも見つけてやりますよ!

ミズノ  そんなの無理だよ。

ヒヤマ  いや、オレはやる! 一人でも。

キノシタ わかったよ。オレも手伝うからさぁ…。

ミズノ  キノシタ君…。

キノシタ ヒヤマだけにそんなことさせるわけにはいかないよ。でもまぁ、公園中を掘り返すわけにもいかないから、もう一度、トオルってやつによく話を聞いて、できるだけ場所を絞り込んでさ…。

ミズノ  だったら私も行く。

ツチダ  エエ〜ッ。じゃあ私もですかぁ?

ミズノ  ツチダさんは、どっちでもいいよ。

ツチダ  どうしようかなぁ…。

ヒヤマ  (迷っているツチダのことは気にせず、キノシタとミズノに向かって)じゃあ、今晩八時。公園の入り口でいいですか。

キノシタ ああ。

ミズノ  わかった。

ツチダ  エエ〜ッ。今晩なの〜。

ヒヤマ  ホネカワに気づかれたら、場所移されちゃうからな…。その前に絶対見つけてやる!

ツチダ  でも夜はちょっと…。

ミズノ  だから、ツチダさんは無理しなくていいってば。

ツチダ  …う〜ん。でもやっぱり私も行きます。なんか一緒にいないと気味悪いし…。

ミズノ  大丈夫?

ツチダ  たぶん。

ミズノ  じゃあ八時に。

暗転。

中央にスポット。

マジックショー風のハデな音楽。

中央のドアを開けて、米川登場。

大きなトランプのカードを何枚か持っている。

客席の誰かにその中の一枚を選ばせ、床に置く。

残ったカードの中に、ドクロのカードを一枚混ぜてシャッフル。

カードを広げると、ドクロが消えている。

米川、床に置いたカードをめくると、それがドクロのカードに変わっている。

米川、ニッと笑って、そのカードをポイッと捨てる。

拍手の音。

米川、満足げにドアの奥に消える。

米川のスポット消える。

ミズノ、キノシタ、ツチダ、ヒヤマの四人登場。

各々、手には懐中電灯。

夜の公園。

ツチダ  (一番後ろから、一つ前にいるミズノに)先輩。

ミズノ  何?

ツチダ  夜の公園って、思いのほか暗くないですか。

ミズノ  うん、暗い。

ツチダ  これじゃ、どこ探せばいいか、わからないですよね…。

ミズノ  そうだね。

ツチダ  もう帰りません?

ミズノ  いいよ。先に帰って。

ツチダ  一人で帰るんですか。

ミズノ  うん。

ツチダ  そのほうが怖いじゃないですか。

ミズノ  じゃあ、一緒にいるしかないね。

ツチダ  センパ〜イ…。

先頭を歩いているヒヤマ、後ろのキノシタに。

ヒヤマ  トオルの話だと、さっきの立て札を右に入っていったって言ってましたから、たぶんこのあたりだと思うんですが…。

キノシタ アア…。

ツチダ  (ミズノに)先輩…。

ミズノ  何よ?

ツチダ  なんか変な臭いしません?

ミズノ  …するね。確かに。キノシタ君!

キノシタ どうかした?

ミズノ  臭いしない?

キノシタ 臭い? …アア、するね。何だろ…。

ツチダ  目がしょぼしょぼする…。

ツチダ、列を離れ、少しヨロヨロする。

ツチダ  鼻が痛くなってきたんですけど…。…キャア!

ツチダ、突然地面にしゃがみ込む。

ヒヤマ  どうした?

ツチダ  落ちた。

ミズノ  大丈夫?

ツチダ  (自分のまわりを照らしながら)何これ。なんでこんなとこに穴が…。…ギャー!

キノシタ どうした!

ツチダ  ヒッヒィ〜!

ミズノ  どうしたの!

ツチダ、腰が抜けて動けない。

ヒヤマ、ツチダの指さすほうを懐中電灯で照らし。

ヒヤマ  こ、これは!

キノシタ どうしたヒヤマ!

ヒヤマ  …ヘビ。

キノシタ ヘビ。

ヒヤマ  うっ、クサ…。

近寄ろうとして、ヒヤマ、手で鼻を押さえる。

ヒヤマ  ホルマリンだ…。

キノシタ (懐中電灯で照らし)ヘビの標本…。割られてる。

ミズノ  どういうこと!

キノシタ わからない…。とにかくツチダを…。

キノシタとヒヤマ、ツチダを抱えて、場所を移す。

一人残ったミズノ、ヘビのあるあたりを懐中電灯で照らし。

ミズノ  ねぇ、キノシタ君、あれなんだろ…。

キノシタ (ミズノのそばにかけより)どれ?

ミズノ  あれ。

キノシタ (懐中電灯で照らしながら、目をこらし)本?

ミズノ  だよね。

ヒヤマも戻ってきて。

ヒヤマ  本? どこですか?

キノシタ あそこ。

ヒヤマ  ホントだ。

ヒヤマ、懐中電灯で照らしながら近づき、本を手にとる。

ヒヤマ  …「呪いと秘密の儀式大百科」

キノシタ なんだそれ。

ヒヤマ  この本、どこかで…。

離れたところでしゃがんでいるツチダ、しゃがんだままで。

ツチダ  それ、米川君だよ。私、米川君がその本持ってるの見たことある…。

ヒヤマ  あいつ…。

キノシタとミズノ、ヒヤマに近づく。

キノシタ ちょっといいか。

キノシタ、ヒヤマから本を受け取り、パラパラとめくる。

ミズノ、のぞきこみ。

ミズノ  あっ、ここ、折ってある。

キノシタ ホントだ。

ミズノ  何?

キノシタ 第七四章…「ガイコツ蘇生法」

ミズノ  ガイコツ蘇生法…。

ヒヤマ  (本を照らしながら)あいつ、これがしたかったのか!

キノシタ (本を読みつつ)…ヘビの死体をドクロの左目から入れ、右目に抜きつつ、次の呪文を唱えるべし…。

ミズノ  それで、ヘビの標本も…。

ヒヤマ  決まりですね。これで。

本に集中している三人。

離れたところでしゃがみ込んでいたツチダ、何か気配を感じたのか、ゆっくりと振り向く。

浮かび上がるガイコツ。

ツチダ  ギャァ〜!

ガイコツ、消える。

三人、ツチダに駆け寄る。

ミズノ  どうしたの、ツチダさん!

ヒヤマ  しっかりしろ!

ツチダ  ガ…。ガ…。

ミズノ  何? なんなの?

ツチダ  …ガイコツが…。

ヒヤマ  ガイコツ!

キノシタ どこに!

ツチダ、ガイコツの立っていたほうを指さす。

キノシタとヒヤマ、懐中電灯であたりを照らしガイコツを探すが、何もない。

ヒヤマ  ないぞ。

キノシタ (ツチダに)ホントに見たのか?

ツチダ、うなずく。

キノシタ おかしいなぁ…。何もないんだけど…。

ミズノ  ツチダさん、しっかりして。ねぇ、どんな感じだった? 言える?

ツチダ  …そこに、そこに立ってました。生きてるみたいに…。

キノシタ まさか…。

暗転。

中央にスポット。

中央のドアを開けて、米川登場。

ヒップホップ系の音楽にあわせてガイコツのような踊り。

しばらく踊ってからドアの奥に消える。

ドアが閉じ、再び開くと、ドアの奥にはガイコツ。

スポット消える。

下手明るく。

ミズノとキノシタが並んで座っている。

キノシタ で、どうなの。ツチダは。

ミズノ  うん、かなりショックだったみたい。まだ休んでる。

キノシタ そうか…。

ミズノ  ヒヤマ君は?

キノシタ あいつ、公園行った次の日、また学校で米川問いつめたんだけど…。

ミズノ  うん。で?

キノシタ (クビを横に振り)しかも、米川のクラスのやつらから「帰れ」コールとかされたらしいよ。

ミズノ  かわいそう…。

キノシタ そういえば、最近、米川ってクラスの人気者らしいんだよね。

ミズノ  そうなの?

キノシタ 手品とかパフォーマンスとか結構ウケてて、…クラスにファンクラブみたいなものもできてるらしい。

ミズノ  へぇ…。

キノシタ だからさぁ、ここんとこヒヤマも、うかつには近づけないわけ…。

ミズノ  そっかぁ〜。

キノシタ とにかく、ガイコツが出てこない以上、ヒヤマもあんまりやりすぎないほうがいいと思うんだ。

ミズノ  そうだね。

キノシタ 化学部がさぁ、集団で米川イジメしてるみたいなウワサも出てるらしいし…。

ミズノ  そうなの?

キノシタ アア。

ミズノ  ヤバイよそれ。先生から何か言われたらどうしよう…。

キノシタ それは大丈夫じゃないかな。

ミズノ  何で。

キノシタ、カバンから封筒取り出す。

キノシタ これ。

ミズノ  (封筒を見て)退部届け?

キノシタ アア。米川、部活辞めるんだって。

ミズノ  エエッ! ヤバいんじゃないのそれって。やっぱりイジメたせいだって思われるよ。

キノシタ それがさぁ、この退部届け、米川が先生に直接持っていったらしいんだけど、そのとき先生が辞める理由聞いたらさぁ、「もう実験は飽きました」って言ったんだって。

ミズノ  飽きた? …ふ〜ん。

キノシタ 学校にもあんまり来てなかったし、部活も数えるほどだったわけだから、飽きるほどやってたとは思えないんだけどね。

ミズノ  だよね。

キノシタ 本当はマジックとパフォーマンスがやりたかったんだってさ。けどガマンして続けてきたんだって。

ミズノ  何それ。

キノシタ とにかくそういうわけで、かなり個人的な理由で部活を辞めることにしたそうだから、先生も納得したってわけ。

ミズノ  なら別にいいけど…。

キノシタ …こんなこと言うのイヤだけど、オレとしては、米川が辞めてくれて、内心ホッとしてるよ。

ミズノ  …。

キノシタ これで、ガイコツ探しもしなくてすむし…。

ミズノ  アア、そうだね。それはそうかも。とりあえず米川君が犯人だとしても、退部したんなら化学部とは関係ないもんね。化学部だけでこれ以上ガイコツ探す理由なくなるよね。

キノシタ そういうこと。…なんかここんとこ、ガイコツのことで頭の中一杯になっちゃってて、正直疲れたし…。

ミズノ  私もそう。文化祭も近いんだし、こんなことばっかりしてられないよね。

キノシタ 学校のほうも、見つからないなら見つからないで、いいってさ。

ミズノ  ホントに? ラッキー。

キノシタ そりゃそうなんじゃない。学校の予算で買ったものじゃないし、授業で使ってたものでもないわけだから…。

ミズノ  ヘビは?

キノシタ あれもいいって。

ミズノ  よしよし。

キノシタ 別にガイコツやヘビがなくったって、誰も困らないよ。

ミズノ  あーなんかホッとした。これで文化祭に集中できるね。

キノシタ うん。

間。

ミズノ  あと、問題はヒヤマ君だね。

キノシタ アアそうか。あいつかなり感情的になってたからな。これで終わりにすることには抵抗あるかも。

ミズノ  絶対そうだよ。で、また私に突っかかってくるんだよ、きっと。

キノシタ それはあり得る。…でもさぁ、部員でもない米川にこれ以上文句言ってもはじまんねぇじゃん…。結局、騒げば騒ぐほどヒヤマの立場が悪くなるだけだと思うんだけどな。

ミズノ  だよね。もし米川君が犯人だったとしても、人を殺して埋めたわけじゃないしね。

キノシタ そうそう。ただの標本だからね…。

下手の明かり消える。

上手明るく。

上手、ツチダとヒヤマが並んで座っている。

ヒヤマ  どうよ。具合。

ツチダ  全然、大丈夫。

ヒヤマ  熱とかあんのかよ。

ツチダ  ううん。メンタルよ、メンタル。

ヒヤマ  学校は?

ツチダ  月曜から行けると思う。

ヒヤマ  …無理すんなよ。

ツチダ  どうしたの、ヒヤマ君のほうこそ、なんか元気ないよ。

ヒヤマ  そうか? …そうかもな。

ツチダ  例のこと?

ヒヤマ  …アア。

ツチダ  どうなったの?

ヒヤマ  なんかウヤムヤになりそうでさ。

ツチダ  そうなの?

ヒヤマ  ホネカワは部活辞めたし、学校もこれ以上問題にしないみたいだし…。

ツチダ  …そう。(間)でもそのほうがよかったんじゃない。

ヒヤマ  そうかなぁ…。

ツチダ  そりゃ、米川君怪しいけどさぁ、部活辞めたんならもう関係ないじゃない。クラスも違うんだし。

ヒヤマ  まぁな。けどなんか割り切れないっつーか、こう、胸の奥のほうがモヤモヤするんだよな。

ツチダ  でも、米川君だって、クラスにとけこんでて、今は人気者なんでしょ。学校だって毎日行ってるみたいだし。…部活は辞めちゃったけど。(間)本当はマジックとパフォーマンスがやりたかったんだって先生に言ったそうじゃない。

ヒヤマ  知ってんだ。

ツチダ  うん。昨日、部長が電話で教えてくれた。いいことじゃない。

ヒヤマ  そうなのかなぁ…。オレさぁ、つきあい結構長いじゃん。それなりにあいつのこと、わかってたつもりだったんだよね。…だからさぁ、あいつが学校こなくなったときも、わかるような気がしたんだよ。部活だってさぁ、部長はみんなで協力してとか言うけど、ホネカワは違うんだよ。あいつは、一人で地道に実験とかしたかったんだよ。それなのに、輪の中に無理矢理入れようとするから、居づらくなったんだぜ。オレ、そういう行き過ぎた思いやりっつーの、うわべだけの優しさっつーうの、そういうの大キライなんだよな。まぁ、そういうの言い訳にしてやる気なくしたホネカワにも腹が立つんだけどさぁ。(間)それにしても、やっぱ、あいつの口から、マジックだのパフォーマンスだのって言葉が出るってのはどうにも納得いかないんだよ。(間)なんて言うのかなぁ、あいつのことが見えなくなったっていうか、距離ができちゃったっていうか、そんな感じがしてしょうがないんだよな…。

ツチダ  米川君がはなれていっちゃったみたいな感じがして、ちょっと寂しいんだ。

ヒヤマ  別に、そんなんじゃないけど、部活誘ったのもオレだったし…。

ツチダ  やっぱり寂しいんだ。

ヒヤマ  違うって。

ツチダ  …ヒヤマ君、米川君のこと、本気で心配してたんだね。

ヒヤマ  やめろよ、そういう歯が浮くようなセリフは。

ツチダ  美しいワ。男同士の友情って。

ヒヤマ  ふざけんなよ。

ツチダ  ハハハ。ヒヤマ君照れてるぅ〜。

ヒヤマ  バ〜カ。(間)…でも、よかったよ。ツチダ、元気そうなんで。

ツチダ  うん。

ヒヤマ  …あのさぁ。

ツチダ  何?

ヒヤマ  ツチダがまだ立ち直ってなかったら、聞くのやめようと思ってたんだけど、聞いてもいいかな。あの晩のこと。

ツチダ  ああ、いいよ。平気。

ヒヤマ  思い出させて悪いんだけど、あのとき公園で見たっていうガイコツ、立ってたんだよね。

ツチダ  …うん。そう見えた。

ヒヤマ  誰かが後ろで支えてたとかは?

ツチダ  そんな感じじゃなかったよ。

ヒヤマ  ツチダって霊感とか強いほう?

ツチダ  ううん。金縛りとかも経験ないし。霊とかも見たことない。

ヒヤマ  …そっか。じゃあさ、あの呪いの本のことどう思う?

ツチダ  う〜ん、よくわかんないけど、ああいうオカルトっぽい本って、趣味の範囲なんじゃないの…。オタクのストレス発散みたいな。

ヒヤマ  だよな。オレもそう思うんだ。…よかったよ、ツチダが結構冷静なんで。…けど、冷静に考えれば考えるほど、どうしても一つだけ謎が残るんだよな。

ツチダ  ガイコツ?

ヒヤマ  アア。ツチダの見たガイコツが、幻でもなくて、呪文で復活したのでもないとしたら、一体何なんだって話になるだろ。

ツチダ  まぁね。

ヒヤマ  オレさぁ、もう一回トオルに会って、話聞いてみようと思ってんだ。きっと何か手がかりがあるはずだよ。

ツチダ  私も手伝うよ。

ヒヤマ  (ちょっと笑って)それはいい。

ツチダ  何でよ。

ヒヤマ  また、腰抜かして、学校休まれると、困るから。

ツチダ  ベ〜!

暗転。

理科室。

ミズノとキノシタが文化祭の準備をしている。

キノシタ あれ、ツチダは?

ミズノ  ああ、いま生徒会のほうに行ってもらってる。ポスターの許可もらわなきゃなんないから…。

キノシタ アッそうか。…で、ヒヤマは。

ミズノ、作業を続けながら首を横に振る。

キノシタ ったく…。いい加減にしてほしいよな。

ミズノ  うん。

キノシタ あと二日しかないんだぜ。パネルまだ半分しかできてないっつーのに…。

ミズノ  うん…。

キノシタ 先輩のオレたちが汗かいてやってるのにな…。

ミズノ  うん…。

ツチダ、ポスターをかかえ、上手より入ってくる。

ミズノ  アッ、どうだった。

ツチダ  ハイ。オッケーでした。

ミズノ  あっそ。ごくろうさま。

ツチダ  次、何しましょうか。

キノシタ ああ、だったらこっちのパネル仕上げてくれるかな。

ツチダ  ハイ。

ミズノ  疲れたんなら休んでてもいいよ。病み上がりなんだから無理しないでね。

ツチダ  いえ、もうホントに大丈夫です。

三人、ゴソゴソと文化祭の準備。

上手よりヒヤマ、スルスルッと入ってきて、ツチダの後ろに立つ。

ツチダ、何気なく振り返って。

ツチダ  キャッ! びっくりしたぁ〜!

ミズノ  ヒヤマ君…。

ヒヤマ  (キノシタに)やっぱり変ですよ。

キノシタ 何がだよ。

ヒヤマ  あのガイコツ。

キノシタ (面倒くさそうに)わかったからさぁ、ちょっとこっち手伝ってくれよ。

ヒヤマ  ガイコツのことはもういいんですか?

キノシタ (ちょっとムッとして)もうガイコツのことは忘れろ、ヒヤマ。オレたちは探偵でも警察でもないんだぞ。

ミズノ  そうよ、ヒヤマ君。ちょっとやりすぎじゃない。文化祭前だっていうのに、ここのところ全然部活にも顔出してくれないし…。

ヒヤマ  それは謝ります。けど聞いて下さい。

ミズノ  何?

ヒヤマ  オレ、いろいろ調べてみたんです。

ツチダ  何かわかったの?

キノシタ 見つかったのか、ガイコツ。

ヒヤマ  いいえ。でも、最近公園にガイコツが出るっていうウワサあるみたいなんです。

キノシタ それって、トオルっていうやつが言いふらしてるんじゃないのか。

ヒヤマ  オレもそうかもしれないと思って、そのことトオルに確認しようとしたら…。

ツチダ  何?

ヒヤマ  トオルのやつ、最近、ひきこもってるらしいんだ…。

ツチダ  あのトオル君が?

ヒヤマ  ああ。

ツチダ  そうなの…。

ヒヤマ  変だと思わないか。トオルがひきこもるなんて。

ツチダ  うん。…で、どうしたの?

ヒヤマ  オレ、トオルの家に行ったんだよ。

ツチダ  会えた?

ヒヤマ  それが、トオルのヤツ、全然出てこようとしなくて…。

ツチダ  へぇ〜。

ヒヤマ  犬の散歩もお母さんが代わりに行ってるらしい…。

ツチダ  …。

ヒヤマ  それで、トオルのお母さんに事情を聞いてみたんだけど、お母さんも全然心当たりがないって…。

ツチダ  いつからなの?

ヒヤマ  三日前、犬の散歩に行ってからだって。

ツチダ  散歩?

ヒヤマ  アア、それもまた変な話なんだけど、トオルのやつ、一人で散歩から帰ったと思ったら、そのままプイッと自分の部屋に入って、それ以来ひきこもっちゃったんだってさ。…しかも腕に血がついてたって。

ツチダ  血?

ヒヤマ  服も破れてたらしくて…。トオルのお母さんが言うには、犬にかまれたんじゃないかって…。

キノシタ 犬って、飼ってた犬にか?

ヒヤマ  そうらしいんです。犬は後から帰ってきたらしいんですけど。

キノシタ つまり、飼い犬に手をかまれたってことか。

ミズノ  そのショックでひきこもり?

ツチダ  トオル君、犬大好きだったから…。

ヒヤマ  でも変だと思わない? いきなり犬が飼い主をかむなんて。

ツチダ  それはそうね…。

キノシタ だからショックだったんだろ。

ヒヤマ  それだけとは思えないんですよ。

キノシタ とにかくさぁ、彼がなんでひきこもったのかは知らないけど、それはそれで仕方ないことだろ。お前が友達おもいなのはわかるけど、オレたち化学部とは、はっきり言って関係ないよ。

ヒヤマ  けど、まだ変なことが…。

キノシタ もういいよ。

ヒヤマ  聞いて下さい。

キノシタ ったく…。

ヒヤマ  オレ、ガイコツの標本置いていった先生のこと調べてみたんです。

キノシタ (あきれた感じで)ゴクロウサン。

ミズノ  キノシタ君…。

ヒヤマ  (気にせず)もともとそれほど熱心な先生じゃなかったみたいで、授業もわかりにくかったっていうんですけどね。でも、すごく人気はあったらしいんですよ。授業中にときどき手品とかしたりして…。

ツチダ  手品を…。

ヒヤマ  かなりの腕前だったって。

キノシタ へぇ〜。

ヒヤマ  よく生徒の前で「オレは本当はマジックとパフォーマンスがやりたかったんだ」って言ってたそうです。

ミズノ  マジックとパフォーマンス?

キノシタ どこかで聞いたセリフだな。

ツチダ  アッ、それって米川君が!

キノシタ 退部するときに!

ヒヤマ  そうなんですよ。

ツチダ  どういうこと!

ヒヤマ  (ポツリと)入れ替わったんじゃないかな。

ツチダ  入れ替わった?

ヒヤマ  うん。米川とその教師が。

キノシタ 何言ってんだ、お前。

ヒヤマ  でも、そう考えるとつじつまが合うんですよ。いろんなことの。

ミズノ  まさか! あり得ないよ。

キノシタ アア、あり得ない。科学的じゃないよ。大体時間がズレてるじゃないか。その理科の教師がいなくなったのって、七年も前だぜ。

ヒヤマ  …でもホネが。

キノシタ ホネ?

ヒヤマ  エエ。ホネが残ってたんじゃないかなって。

ミズノ  どういうこと?

ヒヤマ  準備室にあったあの標本のガイコツが、理科の教師のホネだったとして、…それが米川と…米川のホネと入れ替わったんだとしたら…。

キノシタ オイ、ヒヤマ。お前、疲れてんじゃないか。あり得ないよ、そんなこと。…もしもさぁ、お前が言うみたいにアレが理科の教師のホネだったとしてさぁ、それが米川のホネと入れ替わったとしてさぁ、…そしたらお前、米川の中に元々入ってたホネはどうなったんだよ?

ヒヤマ  …たとえば公園に埋められた…とか。

ミズノ  気持ち悪いこと言わないでよ。じゃあ米川君は骨格標本を盗み出して、公園に持っていって、そこで自分のホネと骨格標本とを入れ替えたってこと? で、自分のホネを埋めちゃったの?

ヒヤマ  って言うか、米川はガイコツに連れて行かれたんだと思うんです、公園に。

ツチダ  連れて行かれた…。

ヒヤマ  あの呪いの本、米川、あれ読んで、理科準備室の標本で試そうとしたんじゃないかな…。ヘビとガイコツの標本使って…。で、ガイコツの入ってた箱のフタを開けたら…。

音響「ギギィ〜」「ギャァ〜!」

ヒヤマ  …逆に、ガイコツに襲われて、体を奪われた…。

ツチダ  …そんな。

ヒヤマ  トオル、言ってただろ。米川が白いものを抱きかかえるようにして歩いてたって。

ツチダ  うん。

ヒヤマ  その白いもの骨格標本じゃないかって、オレたち疑ったよね。

ツチダ  うん。

ヒヤマ  けど、逆だったんだよ。確かにそれはホネだったんだけど、…抱きかかえられてたのは、米川のホネだったんだよ。

キノシタ オイオイ。空想しすぎだろ、それは。米川がガイコツに体盗まれて、しかも抜かれたホネは、公園に捨てられたっていうのかよ。

ヒヤマ  そうです。

キノシタ じゃあさぁ、今、毎日学校に来てる米川の体の中には、手品好きの理科の教師のホネが入ってるってことかよ。

ヒヤマ  たぶん。

ミズノ  米川君が急に明るくなって、手品とかパフォーマンスとか始めたのは、ホネが入れ替わったからってこと?

ヒヤマ  エエ。

ミズノ  気持ち悪いよ、それ。もうやめない、そんな話。

ヒヤマ  (ミズノをにらんで)このままにしておいていいんですか。

ミズノ  このままって…。でもさぁ、どうしようもないんじゃない。

キノシタ (ちょっと考えて)確かに部長の言うとおりだな…。もし仮に、そんなことがあったとして、オレたちに何ができるって言うんだよ。ホネが入れ替わったって、米川は米川だろ。それに米川だって人気者になれたんだから、それでいいじゃないか。別に誰も損はしてないし、殺人とかでもないわけだし…。事件になんないよ。

ミズノ  そうだよ。米川君の家族だって、今のままのほうがいいだろうし…。

キノシタ とにかくさぁ、怪談っぽいノリはここまでにして、今は文化祭に集中しようぜ。

ヒヤマ  いいんですか、ホントに。

キノシタ しつこいぞ、ヒヤマ。お前、証拠もないのに、米川を疑うのかよ。「米川君、キミのホネは他人のホネだろ」って言うのかよ。そんなのプライバシーじゃんかよ。

ヒヤマ  (ひとりごとのように)けど、あいつは米川じゃない。(ツチダに)どう思う?

ツチダ  (うつむいて)…よくわかんないや…。ヒヤマ君の話、聞いてると、なんとなくそんな気もしてくるけど、部長やキノシタ先輩の言うこともわかるし…。やっぱり証拠もないのに友達を疑うのはよくないよ…。

キノシタ その通り!(ヒヤマに)お前の言うとおりなら、公園に米川のホネがあったはずだろ。

ミズノ  そうだよ。でもあったのは、呪いの本とヘビの標本だけだったじゃない。

ヒヤマ  米川は。…米川のホネは穴からはい出した…。

ツチダ  ヒィェ〜。そしたら私があの晩、公園で見たガイコツ…。あれが米川君のホネなの?

ヒヤマ  アア。

キノシタ なんか都合よくないか。お前、そこまで言うんなら、はい出した米川のホネ、探してこいよ。

ヒヤマ  探しましたよ…。

キノシタ で?

ヒヤマ  大体のめぼしはついてるんです。

ミズノ  どこ?

ヒヤマ  トオルの体の中…。

ミズノ  エエ〜ッ!

キノシタ お前、正気か?

ヒヤマ  (ツチダに)トオルが急にひきこもるなんて変だろ。米川ならわかるけど。

ツチダ  …うん。それはそうだけど…。

ヒヤマ  トオルは公園に散歩に行って、そこで米川のホネに襲われて…。

音響「ギャア〜」という叫び声。そして犬の鳴き声。

ツチダ  …。

ヒヤマ  かわいそうにトオルは体からホネを抜かれたんだよ。(ツチダに近づき)こうやって、ズルズルッと…。

ツチダ  やだ…。

ツチダ、しゃがみ込む。

キノシタ もうよせよ、ヒヤマ。怖がってるじゃないか。やっと元気になったんだぞ、ツチダは。そんな話して、脅かして、おもしろいのかよ。そもそも何の根拠もないことだろ。それをみんな無くなった標本に結びつけるのって、おかしいよ。急に手品はじめたり、ひきこもったり、そういうこと、誰にだってあり得ることだろ? それを全部全部ホネのせいにすんのかよ。そんなの誰も信じないって!

ミズノ  私もキノシタ君に賛成。もうやめようよこんな話。ヒヤマ君、そんなにホネが好きなんだったら、来年の文化祭、ホネの研究して発表すればいいじゃない。ね。

ヒヤマ  ツチダはどう思う。

ツチダ  …ゴメン。私、ちょっと気分が…。

ミズノ  大丈夫? 保健室行く?

ツチダ  あっ、いえ、ちょっと風に当たってきます。

ツチダ、上手に去りつつ。

ツチダ  (ヒヤマに)ゴメンね…。

ヒヤマ  …。

キノシタ (時計を見て)ああ、もうこんな時間だ。とにかく手を動かそうぜ。

ミズノ  賛成。

キノシタ オレ、きゃたつ取ってくるわ。

ミズノ  あっ、じゃあ私も行く。(ポスターを手にとり)このポスター、貼っちゃいたいから。

キノシタ、ミズノ上手へ。

キノシタ、去り際に振り返り、ヒヤマに。

キノシタ 忘れろ、ヒヤマ。あり得ないよ。

キノシタ、ミズノ去る。

全体暗くなって、一人残ったヒヤマにスポット。

ヒヤマ、客席に向かって。

ヒヤマ  …あり得ないことなんでしょうか。見た目が同じでも中身が入れ替わってるなんてことは。…オレは、そういうこともなんとなくあるような気がしてるんですよね。ホネが体を欲しがって入れ替わる。体から抜かれたホネはまた誰かの体を欲しがってさまよう…。そんな繰り返しが今もどこかで続いてて、ヘヘヘ…どこまでいってもヒトツタリナイんですよ。体が。

間。

ヒヤマ  (ひとりごとのように)それにしても、キノシタ先輩、どうしてこの話をすると急にイヤな顔をするんだろう。疑いはじめるとキリがないけど、なんかアヤシイな…。ミズノ先輩だっておかしいぞ…「どんなことでもみんなで話し合って決めようね」とかふだん言ってるくせに、この話だけは妙に避けようとしてる…。…ツチダさんだって、どっちの味方してるんだか…。

間。

ヒヤマ  とにかく、みんな、やけに逃げ腰なんだよな…。文化祭がどうだとか、部活がどうだとか、いろんな理由つけてるけどさぁ、そういうこと言い訳にしてごまかしてるようにしか見えないんだよね。やる気がないっていうか、なんていうか…。ガイコツ見つけようって言ってたのに、態度変えすぎだよ、まったく…。ん? まてよ。実はみんな、ホネを抜かれちゃってるんだったりして…。(ニヤッと笑って)…アア、それはあるかもな。…やっぱりあるよ。…あると思うなぁ…そういうこと。知らない間にホネを抜かれて、誰かのホネと取り替えられちゃうってこと。だからみんな急に態度変えても平気な顔してられるんだよ。(客席にむかって)…たとえば、ホラ、よく「自分の意見です」みたいな顔して、前にほかの人が言ってたようなこと、そのまま喋ってるやつとかいるじゃないですか。あれもそうなんじゃない。…ああ、きっとそうだよ…。絶対そう。ああいうのみんなホネのせいなんだ…。…そうかそうか。…へへへ。でも、こんな風に考えだしたら、目の前にいる人のこと信じられなくなっちゃいますよね。一体、今、オレは誰と話してんだろうって感じで…。へへへへ。

間。

ヒヤマ  アア、そう言えば一つ言い忘れてました。オレ、どういうわけか、最近、トオルの飼ってた犬に妙に好かれてるんですよね。まるでご主人様にじゃれつくみたいにされちゃって…。あの犬、前はオレに全然なつかなかったのに…。…なんでかなかぁ、それだけがどうにも不思議なんですよね。へへへへへ。

ヒヤマ、中央のドアを開き、首をかしげながら奥へ。

振り向いて、ニヤリと笑い、ドアを閉める。

スポット消えずに、そのままドアを照らす。

閉まったドアがひとりでに開くと、そこにはガイコツ。

スポットで浮かび上がったガイコツ、すぐに消え。(幕)

【備考】人体骨格模型は案外用意しにくい可能性があります。その場合はスライド投影、影絵などで処理してもよいかもしれません。

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