少人数向け演劇台本を無料提供。

海賊

●5人〜7人 ●40〜50分程度

●あらすじ

生徒指導室で反省文を書かされていたミサキの前に、「船から落ちた」と言うカイゾクが現れ、夏休み前の学校は大騒ぎに。自分の「進路」に迷っていたミサキはやがて…。

●キャスト

ミサキ
カイゾク
教師A
教師B
教師C
警官A
警官B

●台本(全文)

上手にドア。

中央には机。机をはさんで、イスがふたつ。

下手のイスには教師A。電気スタンドの明かりで、資料的なものに目を通している。

上手よりミサキ。ドアの前に立ち、深呼吸。

ドアをノックして。

ミサキ  失礼します。

教師A  どーぞ。

ミサキ、ドアを開け中へ。

教師A、腕時計にチラッと目をやり。

教師A  五分遅刻。

ミサキ  スミマセン…。掃除用具の片づけをしてたらヨウコが来て…。

教師A  言い訳はいいから。

ミサキ  …ハイ。

教師A  (もじもじしているミサキに)座りなさいよ。

ミサキ  …ハイ、失礼します。

教師A  (ミサキをジロリと見て)で、どういうことなのかしら。

ミサキ  …。

教師A  ミサキさん、あなた三年生よね。

ミサキ  …そうです。

教師A  あと半年ちょっとで受験よね。

ミサキ  …ハイ。

教師A  なら、どうしてアルバイトとかしちゃうのかなぁ。

ミサキ  …。

教師A  うちはアルバイト禁止だって、知ってるよね。

ミサキ  …知ってます。

教師A  (机をバンとたたいて)知ってたら、どうしてするのよ!

ミサキ  …。

教師A  あのねぇ、ミサキさん。先生も学期末でいろいろ忙しいわけ。そこへもってきて、こういうくだらないことでいちいち時間とられるのって、すごく迷惑なの。わかる?

ミサキ  …ハイ。

教師A  この学校の生徒である以上、校則は守ってくれないと。…でしょ。先生の言ってること間違ってないよね。

ミサキ  …ハイ。

教師A  一応聞くけど、何でバイトなんかしたわけ? お金?

ミサキ、少しうなずく。

教師A  あなた、別に飲まず食わずの生活してるわけじゃないでしょ。ご両親もいて、家もあって、そうでしょ。

ミサキ  …ハイ。

教師A  てことは、早い話、オシャレだとか、遊びだとか、そういうためのお金がほしくてやっちゃったわけよね。

ミサキ  …まぁ。

教師A  しかも、夜のバイト。

ミサキ  あっ、でも、夜って言っても一一時までで…。

教師A  十分夜です! 深夜よ深夜。大体、使うほうも使うほうよ。未成年だと知っててそんな夜遅くまで…。

ミサキ  アッ、いえ、それは…。違います…。

教師A  違う? 何? それってもしかして年齢ごまかして働いてたってこと?

ミサキ  …エエ、まぁ…。

教師A  あきれた! 年齢ごまかすなんて二〇年早いわよ。そういうのは先生くらいの歳になってから…。

ミサキ、クスッと笑う。

教師A  何がおかしいのよ。

ミサキ  …スミマセン。

教師A  とにかく校則違反には違いないわけだし、特に三年生がこの時期にバイトをしたってことが大問題です。…お手本になるべき三年生がまったく…。「実はおたくの生徒さんが…」なんて連絡受けたこっちの身にもなってごらんなさいよ。

ミサキ  …。

教師A  そりゃ、あなたは、遊びたいけどお金がない、だからバイトでかせぎます、それがどうしていけないのってなくらいの気楽ぅ〜な意識でバイトしたんだろうけど、まわりは大迷惑してるの。そういうこと、わかってる? わかってないでしょ! あなたのしたことは、親や先生や同級生や下級生や、そういうまわりのみんなへの裏切りだし、結果として、卒業生たちが努力して築きあげてきたこの学校の名誉に大変なキズをつけてしまったのよ!

ミサキ  …ハイ。

教師A  処分は明日の職員会議で決めますから…。

電話鳴る。

教師A、立ち上がって受話器を取り。

教師A  アッ、ハイ。エエ…。そうです。ミサキさんの件で…。…アアそうですか。わかりました。すぐ行きます。

教師A、受話器を置き。

教師A  ちょっと職員室に行ってくるから、その間に反省文書いてなさい。いいわね。

ミサキ  アッ、ハイ。

教師A  紙と鉛筆は?

ミサキ  あります。

教師A  (鼻で笑って)用意がいいわね。

教師A、ドアを開け、上手に去る。

ミサキ  フゥ〜…。参りました。

ミサキ、深呼吸。

カバンから紙と筆箱を出し、何か書こうとする。が、何も思いつかないのか天井を見上げて、しばしため息。

しばらくして、気を取り直し書きはじめる。

ミサキ  早いとこ片づけるか…。(口に出しつつ書きながら)私は、校則違反だと知りながらアルバイトをしてしまいました。本校生徒として、また最高学年である三年生として、してはいけないことをしたと反省しています。これからは、気持ちを入れかえ、夏休みになっても、受験生だということを忘れず、この夏の過ごし方で人生が決まるのよ、とおっしゃった先生の言葉を胸に刻んで、一生懸命頑張りたいと思います。もう二度とこのようなことは致しません。どうか許して下さい。…と。

ミサキ、ふとペンを止め。

ミサキ  「二度とこのようなことは致しません。どうか許して下さい」…か。ちょっと卑屈すぎるな。いくらなんでも。

ミサキ、消しゴムで書いたところを消し。

ミサキ  「二度とこのようなことは致しません。どうか許してちょんまげ」…アッダメ。ここは笑わすとこじゃないし。これじゃきっと笑ってくれない…。

ミサキ、再び消しゴムで書いたところを消し。

ミサキ  「二度とこのようなことは致しません。どうか許してほしいのだ」…いかん。相手を完全にナメてる…。バカボンのパパじゃないんだからさぁ…。

ミサキ、再び消しゴムで書いたところを消し。

ミサキ  「どうか許してほしかった」…過去形かよ。ダメだこりゃ。

ミサキ、再び消しゴムで書いたところを消し。

ミサキ  「どうか許してほしいはず」…違うな。絶対違う。自分のことだかんね。もっと切実な感じがないと…。

ミサキ、再び消しゴムで書いたところを消し。

ミサキ  「どうか許して、捨てないで」…状況変わってるっつーの。

ミサキ、鉛筆を放り投げ。

ミサキ  ア〜もう、どうでもいいや、面倒くさい。ア〜ヤダヤダ。何だか全部つまんないんですけど。…ていうか、今どきバイト禁止ったって誰も守らんでしょ、普通。たまたまチクられちゃったのがマヌケって言えばマヌケだけどさぁ。…にしても何かムカツク。(教師Aの口まねで)「この学校の名誉に大変なキズをつけてしまったのよ!」って、知らないっつーの。どーせ田舎の進学校だろ、全宇宙的にみればゴミみたいなもんじゃんか!

ミサキ、机をゴンとけとばす。

電気スタンド消える。

ミサキ  アッ、ヤバ!

薄暗くなった部屋。

ピカッと光って、突然、カミナリと激しい雨の音。

ミサキ  ヒッエ〜。いきなりすぎるよこの夕立。カサもってきてないっちゅーの。

バリバリ、ドーンという音。

ミサキ、しゃがみ込んで。

ミサキ  …落ちたよ。しかもかなり近い。

しばらくして雷鳴と雨音、急に小さくなっていく。

ミサキ、立ち上がり。

ミサキ  変な夕立…。アッそうだ。スタンド直さなきゃ…。

ミサキ、電気スタンドのスイッチを押したり、たたいたりする。

客席よりカイゾク登場。舞台の上にあがってきつつ。

カイゾク …クソッ、油断した。(自分の服を見て)何だコレ? ワッ、ワカメじゃんかよ。…ったく、カッコワリィ〜なぁ〜。

ミサキ、舞台にあがってきたカイゾクに気づき振り向く。

カイゾクもミサキに気づいて。

カイゾク 誰だ!

ミサキ  あんたこそ誰よ。

カイゾク (ミサキのセーラー服を見て)お前、カイグンだな!

ミサキ  何言ってんの?

カイゾク とぼけんな。水兵だろ。服でわかんだよ、服で。

カイゾク、ミサキに近づき。

カイゾク 何だお前。スカートはいてんのかよ。

カイゾク、ミサキのスカートをさわろうとする。

ミサキ  何すんのよ。ヘンタイ!

カイゾク ヘンタイはそっちだろ。いくらなんでもおかしいって。水兵がスカートってのは。

カイゾク、ふとミサキの顔を見て。

カイゾク …お前、女じゃん。

ミサキ  遅いわよ。気づくのが!

カイゾク (首をひねり)上がセーラー、下がスカート。女で、しかも口が悪い…。う〜ん、趣旨がわからん…。カイグンの新しい部隊なのかなぁ〜。それにしてもカッコ悪いぞ…。

ミサキ  何ブツブツ言ってんのよ。それよりあんたこそ誰。答えなさいよ。

カイゾク ハァ? …誰って、見てわかんないかなぁ。

ミサキ  さぁ? ちっとも。

カイゾク どう見てもカイゾクなんですけど。

ミサキ  カイゾク? カイゾクって?

カイゾク あちゃ〜。マジっスか。ホント、マジっスか。マジでカイゾク知らないんスか?

ミサキ  カイゾクは知ってるけど…。

カイゾク 何だ、やっぱ知ってんじゃん。

ミサキ  でもカイゾクって海でしょ。

カイゾク もちろん。

ミサキ  ここ学校なんですけど。

カイゾク ガッコウ? 水兵の?

ミサキ  水兵から離れろ!

カイゾク でもカイグンだろ。

ミサキ  ノー!

カイゾク ホントにカイグンとは無関係?

ミサキ  イェ〜ス。

カイゾク あっそう。ならいいや。カイグンじゃないんなら。(キョロキョロして)それにしても、けっこう暗いね。ガッコウってのは。

ミサキ  ああ、スタンドが壊れちゃってさ…。ちょっと待って。

ミサキ、スイッチを押したりたたいたりするが、つかない。

ミサキ  ダメだ。やっぱ壊れてる。

カイゾク (ミサキの様子を見て)あのさぁ、言うこときかないときはさぁ、しめあげるんだよ。ギュ〜ッと。

ミサキ  しめあげる?

カイゾク アア、たいがいのものはギュ〜ッとしめあげると根をあげるから。

ミサキ、電気スタンドの首をひねる。

明かりつく。

ミサキ  すっごーい。

カイゾク まぁね。それでダメなら鮫のエサにしちゃえばいいんだよ。

ミサキ  変なの。(カイゾクを見て)ねぇ、服ビショビショじゃん。

カイゾク 船から落ちちゃってさ。

ミサキ  (笑って)またまたぁ〜。雨に濡れただけでしょ。

カイゾク 違うよ。ほら。

ミサキ  何それ?

カイゾク ワカメ。

ミサキ  (笑って)変なの。

カイゾク そうか?

ミサキ  変だよ。いきなり窓から入ってきて、カイゾクだとか船から落ちたとか言うんだもん。

カイゾク だってホントのことだし。

ミサキ  じゃあ、どうして船から落ちちゃったの?

カイゾク カイグンのやつらとやりあっててさ、飛んできた大砲のタマよけたひょうしにバランスくずしてドボ〜ンよ。…ったく、カッコ悪いったらありゃしない。

ミサキ  カイグンと戦ってたの?

カイゾク 聞こえなかったかなぁ、ドーンドーンって、かなりでっかい音してたはずなんだけど。

ミサキ  それって、カミナリでしょ。よくそんな変なことばっか言えるね。(カイゾクをジロジロ見て)あんたひょっとして演劇部?

カイゾク だから、カイゾクだってば。

ミサキ  まぁいいや。とにかくあんた、ここにはいないほうがいいよ。

カイゾク 何で。

ミサキ  もうすぐ先生戻ってくるもん。

カイゾク 先生?

ミサキ  うん。見つかったら怒られるよ。

カイゾク 怖いのかよ。

ミサキ  わりとね。怖いっていうか、うるさいって感じ。つかまったら長くなるよ。

カイゾク つかまったら? …ああ、そういうことか。なるほど。

ミサキ  なるほどって、何納得してるわけ?

カイゾク (自信満々に)それ、カイグンだよ。

ミサキ  またそれか…。ねぇ、カイグンって何かの隠語なの?

カイゾク カイグンはカイグンさ。とにかく、ネチネチしつっこくてさぁ、どこで見てんのか知らないけど、四六時中オレたちのこと見張ってて、何かしようとするとすぐに飛んできて、じゃましやがんのよ。

ミサキ  アア、そういうことか。それならわかるわかる。そういう意味なら、先生もズバリ「カイグン」だね。間違いない。

カイゾク やっぱな。カイグンのやつらはみんなそうだから、ピーンときたよ。…まぁこっちが良くないことしてんのは確かなんだけど、それにしてもあんなに威張ることはないだろうって思うね。

ミサキ  そうそう。そうだよね。

カイゾク たまらなく堅苦しくてよぉ〜。

ミサキ  口を開けば「規則を守れ」。

カイゾク 規則なんかくそくらえだっつーの。

ミサキ  そうよそうよ。誰が決めたんだっつーの。

カイゾク まったくその通り! あんた、わかってるね。服は変だけど。

ミサキ  やめてよ服のことは。そんな風に言われるとホントに変なのかなって気になってくるじゃない。

カイゾク じゃあ脱いじゃえば。

ミサキ  バカ。

カイゾク …ところでさぁ、あんた、…エッと名前とかあるんだっけ?

ミサキ  あるに決まってるじゃん。ミサキだよ。ミサキ。

カイゾク アア、ミサキね。いい名前じゃん。服は変だけど。

ミサキ  今度言ったら、殺す。

カイゾク コエェ〜。カイゾクも思わずビビったぞ、今の視線。あんたただ者じゃないな…。

ミサキ  服は変だけど。でしょ。

カイゾク アハハ。よくわかったね。ところでさぁ、ミサキ、何してんの。ここで。

ミサキ  (反省文を見せ)これよ、これ。

カイゾク 何だそれ。

ミサキ  反省文。バイトがバレてさ。

カイゾク バレた? そんなに悪いことなのかよ、バイトって。

ミサキ  とんでもない。みんなやってることだよ。

カイゾク で、もうかるのかよ。バイトってのは。

ミサキ  まぁまぁかな。…実はさぁ、私、お金貯めて、この夏、海行きたいんだ。

カイゾク (即座に)海はいい!

ミサキ  でしょぉ〜。

カイゾク 当たり前じゃん。海ほどいいもんはないって。キラキラしてて、どこまで行っても終わりがなくて。

ミサキ  だよねぇ〜。私ね、海に行って一人で考えてみたいんだ。

カイゾク 考えるって何を?

ミサキ  この先のこと。…どうしようかなって。

カイゾク へぇ〜。

ミサキ  迷ってんだよね。将来のこととかさ。…この時期になると、親とか先生とか、まわりからいろいろ言われるじゃん。でもさ、正直言って自分じゃよくわかんないんだよね。…けど、わかんないとか言うとさ、「自分のことでしょ」とか「真剣に考えろ」とか言われちゃってさ。まわりの子も何となくそれらしくやってるみたいで、そういうの見るとますます焦るし…。(間)でもさぁ、決めようと思っても決められないときってあるでしょ…。今そういう感じなんだ。

カイゾク アア、決めようと思っても決められないときね。うん、あるある。たとえば二隻の船を同時に見つけて、どっちを襲うかすぐに決めなきゃなんないのに、あっちかなこっちかなって考えすぎて迷っちゃうときとかだろ。でさぁ、そういうときって大体裏目に出るんだよ。…実は、ついこの間も大きな船と小さな船が浮かんでてさぁ…。あれ、やっぱセオリー通り小さいほうにすべきだったんだよなぁ〜、きっと。まぁ、しかたないか…。しかし、おしいことをした…。

ミサキ  (すっかり自分の世界に入っているカイゾクの肩をたたいて)あのぅ〜、もしもし。

カイゾク ハイ?

ミサキ  それ、ちょっと違うかもしんない。私のケースとは。

カイゾク あっ、そう。…まっ、とにかくいろいろあるけど海は最高だよ。

ミサキ  だよね。(ハッとして)あっ、そうだ。(カバンから雑誌を取り出し)ねぇねぇ、見て見て。どこがいいと思う?

カイゾク、雑誌を手に取り。

カイゾク ゲゲゲ!

ミサキ  どうかした?

カイゾク (雑誌のタイトルを読み、ワナワナと)「この夏。海のお宝スポット一〇〇」! ゲゲゲ!

ミサキ  驚きすぎだよ。

カイゾク こっ、これって、宝の地図じゃんか! しかも一〇〇カ所も載ってる!

ミサキ  宝の地図って言うか…。

カイゾク (興奮して、ミサキの話、聞いてない)スゲー。スゲーよ、ミサキ。お前、よくこんなもの手に入れられたな。

ミサキ  コンビニで売ってるよ。

カイゾク (興奮して、ミサキの話、聞いてない)お宝スポット一〇〇か。こりゃスゲー。マジ、スゲーよ。船長が見たら、泣いて喜ぶだろうなぁ〜。一〇〇カ所かぁ〜。考えただけでもゾクゾクするなぁ〜。

ミサキ  いるならあげるよ。

カイゾク マジかよ。マジかよ。ホントにマジかよ。

ミサキ  うん。いいよ。

カイゾク お前、いいやつだな。(急に真剣な顔になって)…でも、ダメだ。やっぱ、これはもらえない。

ミサキ  何で?

カイゾク だって、オレ、カイゾクじゃん。カイゾクがさぁ、あげるって言われて、すんなり受け取るのって、ちょっとな…。

ミサキ  アッそう。じゃあ、あげない。

ミサキ、カイゾクからひょいと雑誌をとりあげ、カバンの上に置く。

カイゾク ヒィエェェ〜。

ショックで倒れるカイゾク。

ミサキ  やっぱ、あげようか?

カイゾク ガマンだ。ガマン。

ミサキ  変なの。

カイゾク (ひらめいた感じで)アッそうだ!

ミサキ  何よ。びっくりするじゃない。

カイゾク ミサキもカイゾクになれよ。

ミサキ  私がカイゾク?

カイゾク アア、そしたら、仲間じゃん。仲間になれば、見せっことかできるじゃん!

ミサキ  カイゾクねぇ〜。(ちょっとイジワルっぽく)…でも、私、服とか変だしィ〜。

カイゾク 似合ってる、似合ってる。すごく似合ってるから、服のことなんて心配すんなよ。カイゾクは見かけじゃないんだし。

ミサキ  何か言うこと変わってない?

カイゾク ダメダメ! 小さなことにこだわってちゃダメ。疲れちゃうよ。

ミサキ  ああ、そうね。それはそうかも。(間)う〜ん…カイゾクかぁ〜。

カイゾク どうよ。結構向いてると思うけど。

ミサキ  そう?

カイゾク だって、しばられるのキライだろ。

ミサキ  うん。

カイゾク エラそうなのとか。

ミサキ  うん。

カイゾク で、海が好きなんだろ。

ミサキ  好き。

カイゾク だったら、カイゾクでいいじゃん。

ミサキ  …そうねぇ。(ちょっと考えて)うん。おもしろいかもね。カイゾクってのも。なんか、チマチマ考えてんのも疲れるし。この際カイゾクになってドカーンとね。

カイゾク そうそう。

ミサキ  船とか襲って。

カイゾク アア、アア。

ミサキ  お宝全部いただいて。

カイゾク サイコー!

ミサキ  やりたいようにやるゼ! みたいな。

カイゾク シビレルゥ〜!

ミサキ  じゃあ、いいよ。カイゾクってことで。

カイゾク ヨッシャー!

ドアの向こう、教師Aと教師B現れ、立ち話。

教師A  じゃあ、そういうことで…。

教師B  先生は?

教師A  (ドアを指さし)続きがあるから…。

教師B  アア。(ちょっと笑って)ご苦労様。

教師B、去る。

教師A、ため息。

ミサキ  ヤバ! 戻ってきた。

カイゾク 誰。

ミサキ  先生。

カイゾク カイグンか。

ミサキ  隠れて!

カイゾク チッ。

カイゾク、下手に隠れる。

教師A、ドアを開けて入ってくる。

教師A  どうかした?

ミサキ  いえ、別に…。

教師A  書けた? (机の上の作文を手に取り)…どうか許して、捨てないで? 何これ。

ミサキ  アッ、それは…。

教師A  ミサキさん。あなた、先生のことバカにしてるの?

ミサキ  いえ、そんなことは…。

教師A  (イスに座り、作文をミサキに突き返して)さっさと書き直しなさいよ。

ミサキ  …ハイ。

ミサキ、作文を消しゴムで消し始める。

教師A、その様子を見ながら。

教師A  ミサキさん。この際だから確認しとくけど、あなた進学希望でいいのよね。

ミサキ  …ええ、一応。

教師A  一応?

ミサキ  アッ、ハイ。進学です。

教師A  だったらもう少し何とかしないとダメでしょ。

ミサキ  ハイ…。

教師A  このままじゃ、行けるとこないわよ。…まわりはみんな気合い入れ始めてるっていうのに…。大体、どういう方面に進みたいの? …アッそうだ。いい機会だから、その反省文にハッキリ書いといてくれるかな。

ミサキ  何をですか?

教師A  進路よ、進路。

ミサキ  あっ、でも…それは…。

教師A  いいから書きなさい。自分の進路でしょ。まさか三年生のこの時期になって決めてないなんてことないわよね。

ミサキ  ……。

教師A  行きたいとことか、したいこととかあるでしょ。それを書けばいいのよ!

ミサキ  ……。

教師A  ハッキリしない人ね。進路よ。進路。進路を書きなさい!

カイゾク、下手より飛び出し。

カイゾク ちょっと待ったぁ〜!

教師A  何ですか。あなた。

ミサキ  あっ、この人は違うんです…。

教師A  何が違うんですか。

ミサキ  この人は…。

カイゾク カイゾクだ。

教師A  カイゾク?

カイゾク ミサキ、気をつけろ。こいつはスパイだ。

教師A  スパイですって。

カイゾク とぼけんな! さっきから、根掘り葉掘り進路のこと聞き出そうとしてたじゃないか。

教師A  何を言ってるの、この人は。

ミサキ  (カイゾクに)違うの。進路っていうのは…。

カイゾク シッ! 言うんじゃない。(教師Aに)しかし、油断もスキもないなぁ。ミサキがカイゾクになったと知ったら、急に「進路はどこなの」か。まったく…。いいかミサキ。こいつに進路を教えたら最後、行くとこ行くとこカイグンの船が先回りしやがるからな。絶対言うんじゃないぞ。

教師A  (ミサキに)知り合いなの?

ミサキ  あっ、エエ…まぁ…。

教師A  この学校の生徒じゃないわよね。

ミサキ  …たぶん。

教師A  たぶん? どういうことなの一体。許可はとってるの?

ミサキ  …さぁ。

教師A  さぁ? うちの生徒でもないのに勝手に校舎に入れていいと思ってるの。しかもここは生徒指導室よ。何を考えてるのよ、あなたは。

カイゾク 逆ギレかよ。

教師A  逆ギレ? どういうことですか。

カイゾク スパイだってことがバレたもんで、焦ってんだろ。

教師A  いいから、今すぐ、出て行きなさい!

ミサキ  (カイゾクに)ゴメン。そうして。お願い!

カイゾク 大丈夫かよ。一人で。

ミサキ  うん。何とかするから。

カイゾク 気をつけろよ。

ミサキ  うん。ありがと。

カイゾク、教師Aをにらみつつ、ドアの外へ消える。

教師A  何なの一体。…ミサキさん、ああいう人と付き合ってるの?

ミサキ  付き合ってるっていうか…まぁ…。

教師A  とにかく進路を…。

ミサキ  アッ、先生。(声をひそめて)進路のことは今は聞かないで下さい。

教師A  どうしてよ。

ミサキ  …話がややこしくなりますから。

教師A  ややこしくしてるのはあなたの知り合いでしょ。

ミサキ  そうですけど…。あの、必ず答えは出しますから…。

教師A  (あきれて)…まぁいいわ。じゃあ、とにかくその反省文の最後のところ直して。そんなの職員会議で見せられないから。

ミサキ  …ハイ。

ミサキ、反省文を直しはじめる。

教師A、ふと机の下に目をやり、カバンの上に置いてある雑誌を見つけ、手に取る。

教師A  これ何?

ミサキ  (顔を上げ)アッ、それは。

教師A  「この夏。海のお宝スポット一〇〇」…あなた、こんなもの見ながら、反省文書いてたの。

ミサキ  イエ、あの…。

教師A、持っていた雑誌でバンと机をたたき。

教師A  マジメになりなさいよ。泣いても笑ってもあと半年でしょ。どうしてあと半年くらい頑張れないの! 死ぬ気でやりなさいよ。死ぬ気で。…あなたって人は…。(雑誌を手に)没収よ。いいわね!

上手よりカイゾク、ドアを開けて飛び込んでくる。

カイゾク ふざけんな!

ミサキ  アッ。

教師A  まだいたの。

カイゾク 返せよ! その本。

教師A  ハァ?

カイゾク 本を机の上に置いて、今すぐ出て行けってーの!

教師A  教師に向かってそういう口のききかたをしていいと思ってるの。あなたこそ出て行きなさい!

カイゾク 黙れ!

教師A  人を呼びますよ。

カイゾク (笑って)人を呼ぶのは、これを見てからにしろ。

カイゾク、剣を抜く。

教師A  ヒッ!

カイゾク もう一度だけ言うぞ。地図を置いて、今すぐ消え失せろ!

教師A  わっ、わかったわ…。…行きましょ、ミサキさん…。

カイゾク ミサキは渡さない。

教師A  人質にする気ね。

カイゾク バカ言うな。そっちが人質にする気だろ。

教師A  とにかくうちの生徒に手を出したら…。

カイゾク うるさい!

カイゾク、剣を教師Aに向ける。

教師A  ヒィィ〜。

教師A、ドアを開けて、上手へ走り去る。

カイゾク、剣をおさめて。

カイゾク フゥ〜。ヤバかったな。

ミサキ  ヤバかったっていうか、ヤバくなったっていうか…。

カイゾク そう? マズかった?

ミサキ  うん、かなり。

カイゾク でもよかったよ。地図を奪われなくて。これは絶対カイグンには渡せないからな。

ミサキ  …。

カイゾク あれ。元気ないじゃん。

ミサキ  だって、このままじゃすまないよ。きっと大騒ぎになってさ…。

カイゾク 大丈夫、大丈夫。

ミサキ  そう?

カイゾク 絶対負けないから。

ミサキ  いや、そういうことじゃなくて…。(間)とにかく逃げて。あとは何とかするから。

カイゾク イヤ。ここで戦う。

ミサキ  ダメだよ。そんなことしたら逮捕されちゃうよ。

カイゾク でも戦うときは戦わないと。逃げてばっかじゃさぁ、カイゾクっぽくないじゃん。…それに、今ここを離れるわけにはいかないし。

ミサキ  どうして?

カイゾク 迎えがくるから。

ミサキ  迎え?

カイゾク うん。オレが船から落ちたことに気づいたら、船長、絶対戻ってくるもん。カイゾクは仲間を見捨てないかんね。

ミサキ  そうなんだ…。(間)ねぇ、一つ聞いていい?

カイゾク 何?

ミサキ  カイゾクさんは、船に乗って、どこに行くつもりなの?

カイゾク アア、進路?

ミサキ  うん。

カイゾク (小声で)カイグンには言うなよ。

ミサキ  うん。

カイゾク 基本的に海が大きく広がってるほうさ。

ミサキ  大きく広がってるほう…。(ちょっと笑って)ずいぶんテキトーなんだね。カイゾクって。

カイゾク テキトーって言えばテキトーかな。でもまぁ、細かいカジ取りは、そのときそのときの風しだいだかんね。

ミサキ  風しだい?

カイゾク そりゃそうさ。海にレールはないもん。そんなにきっちりとは進めないよ。

ミサキ  そっか。フラフラ進んでいいんだ。

カイゾク そうだよ。どっちかっていうとそのほうがいい。

ミサキ  フラフラしてたほうがいいの?

カイゾク きっちり進もうとして目の前ばっか見てると海の広さがわかんないからね。なるべく遠くを見てたほうがいいのさ。

ミサキ  カイゾクっておもしろいね。

カイゾク そっか?

ミサキとカイゾク、見つめ合って笑う。

ドアの外。教師A・B、バタバタと登場。

教師B  ここですか。

教師A  ええ。

教師B  とにかく様子を…。

教師B、ドアを少し開けて、中の様子をうかがう。

カイゾク (剣を抜き)来やがったな。

教師B、ドアをしめて。

教師B  確かに刃物持ってますね。ヤバイなぁ…。

教師C走ってきて。

教師C  警察には連絡しました。ど、どうですか中の様子は。

教師B  よくないですね…。

教師A  ミサキさん…。

教師B  先生、しっかりして下さい。とにかく、警察がくるまでは、我々が頑張らないと。

部屋の中。カイゾク、剣を振り回したりしてウォーミングアップ。

ミサキ  ねぇねぇ。それ振り回さないほうがいいんじゃない。刺激強すぎるよ。

カイゾク でもさぁ〜。これ持ってないとカイグンが入ってきたときにさぁ…。

ミサキ  あっ、そうだ。だったらさぁ入ってこられないようにすればいいじゃん。

ミサキ、机やイスでバリケードをつくりはじめる。

ミサキ  あっ、それもってきて。

カイゾク (そばにあったロッカーを指さし)これ? あっ、ああ。

カイゾク、ロッカーを動かしはじめる。

ミサキ  重い? 手伝おうか。

カイゾク あっ、ああ。

ミサキとカイゾク、ロッカーをドアのところに運ぶ。

ミサキ、手をすべらせて。

ミサキ  キャ!

ドアの外。

教師B  悲鳴だ!

教師C  まっ、まさか!

教師A  ミサキさん!

教師B、ドアを開けようとするが、うまく開かない。

教師B  くそっ。犯人め、バリケードをつくりやがった。

教師C  立てこもる気じゃないでしょうね。どうします、そんなことになったら…。

部屋の中。

ミサキ  …大体できたね。これでしばらくは時間がかせげるよ。

カイゾク うん。

教師A  (ドアごしに)ミサキさん。ミサキさん。大丈夫!

ミサキ  大丈夫でーす。

教師B  (ドアごしに)キミのそばにいる人物と話、できるかなぁ?

ミサキ  (カイゾクに)話したいんだって。どうする。

カイゾク ヤダよ。カイグンと話するの。やつら、平気でワナをしかけるかんね。

ミサキ  (ドアごしに)話はしたくないそうでーす。

教師B  (教師A・Cに)ダメみたいです。

教師A  だったら、私がミサキさんと話をしてみます。…ミサキさん、聞こえる?

ミサキ  ハーイ。

教師A  もう少しの辛抱だからね。何かあったら大きな声を出すのよ。

ミサキ  大丈夫で〜す。悪い人じゃありませんから。

カイゾク (ミサキに)あっ、ちょっといいかな。

ミサキ  何?

カイゾク 一応カイゾクなんで、いい人か悪い人かって言うと、悪いほうでお願いしたいんだけど。

ミサキ  あっ、そうか。(ドアの外に向かって)訂正しまーす。やっぱり悪い人で〜す。

教師C  何て言ってます?

教師A  悪い人じゃないって言ってから、やっぱり悪い人だって訂正しました。

教師C  それ、そばで脅されてるんですよ。悪い人じゃないって言わされたあとに、スキを見てホントのことを伝えたんだ。

校内放送のアナウンス。

N 校内放送、校内放送。一階生徒指導室に不審者が侵入しています。生徒は直ちに下校して下さい。校舎内に残っている人は、非常口より速やかに退出願います。繰り返します。一階生徒指導室に不審者が侵入しています。生徒は直ちに下校して下さい。校舎内に残っている人は、非常口より速やかに退出願います。

ミサキ  わっ。ヤバ。やっぱ大騒ぎじゃん。

カイゾク 不審者ってオレのこと?

ミサキ  トーゼン。

カイゾク カイゾクだって言ってんのに…。

ミサキ  だって、「生徒指導室にカイゾクが侵入しています」じゃ、リアリティないじゃん。

カイゾク でもさぁ、不審者って言うと漠然としてイメージわかないけどさぁ、カイゾクなら、チョーわかりやすいじゃんか。こんな感じで。

カイゾク、再び剣を抜き、戦っている雰囲気を出す。

教師C  (オロオロして)今のマズいんじゃありませんか。刺激しちゃったかも。

教師A  ちょっと中の様子、聞いてみます。…ミサキさん。聞こえる?

ミサキ  ハ〜イ。

教師A  隣の人、どうかしら?

ミサキ  立ち上がって剣を振り回してまーす。

ドアの外。

教師C  何ですって?

教師A  かなりコーフンしてるみたいです。

教師C  やっぱりな。ヤバイですよ、このままじゃ。

教師B  ミサキ君、大丈夫かな。

教師C  しかし、どうしてこんなことになったんでしょうねぇ〜。

教師A  知り合いみたいなんです。中の二人。

教師C  知り合いって、付き合ってたとか?

教師A  ええ、たぶん…。

教師C  別れ話のもつれ、とかですかね。

教師A  海に行く約束してたみたいでしたけど…。

教師B  ああ、それをミサキ君が断ったんで…。

教師C  キレちゃったんだな。

教師B  それくらいのことで、まったく…。

教師C  いやいや、二人で海に行けるんだってことで、彼、相当気合い入ってたんだと思いますよ。だって、見ました? あの格好。かなりヤバいタイプですよ、あれは。

教師A  そういえば自分のことカイゾクだって言ってました。

教師B  …キレやすいオタクか。これはヘタに手を出すと、何するかわからないな。

パトカーのサイレン。

教師C  来ましたね。警察。

部屋の中。

パトカーの音に気づき、ミサキ、窓の外(客席のほう)を見る。

赤いライトがチラチラしている。

ミサキ  警察、来ちゃったよ。

カイゾク ケーサツ?

ミサキ  何て言うのかな。カイグン・オブ・カイグンズみたいな感じ。

カイゾク オッシャー。燃えてきたぜ!

ドアの外。

教師C  大丈夫ですかね。中。

教師A  聞いてみます…。…ミサキさん。

ミサキ  ハァ〜イ。何ですかぁ〜。

教師A  どう、そっちの様子は?

ミサキ  かなり燃えてますよぉ〜。

教師C  何て言ってます?

教師A  燃えてるって。

教師C  火をつけたんですか。何てことを!

教師A  どうしましょう!

教師C  消防署に連絡しましょうか。

教師B  ええ、お願いします。あっ、あと警察のほうに今の状況説明してきて下さい。

教師C  わかりました。

教師C、去る。

教師A  (手を口に当て、泣き出しそうな感じで)ミサキさん…。私が目をはなしたから…。

教師B  先生のせいじゃありませんよ。

教師A  でも…。

教師B  しばらく様子を見ましょう。それしかないでしょ。

教師A・B、消える。

部屋の中、ミサキとカイゾクにスポット。

ミサキ  ねぇ。

カイゾク 何?

ミサキ  船長迎えにくるといいね。

カイゾク 来るよ。絶対。

ミサキ  船が来たら、行っちゃうんだよね。

カイゾク まぁね。

ミサキ  そしたら、もう会えない?

カイゾク う〜ん、どうだろ。難しいかもなぁ。

ミサキ  何か寂しいな。

カイゾク そう?

ミサキ  うん。

カイゾク だったら、ミサキも来ればいいじゃん。カイゾクなんだからさぁ。

ミサキ  エ〜ッ。どうしようかなぁ…。

カイゾク 来なよ。こんなとこいたっておもしろくないだろ。

ミサキ  うん、それはそうだけど…。…でも。

カイゾク でも?

ミサキ  自信ないよ。

カイゾク どういうこと?

ミサキ  カイゾクさんみたいにさ、自由に生きる自信ないもん。

カイゾク 自由に生きる自信?

ミサキ  うん。私、カイゾクさん見てて思ったんだ。この人すごく自由だなって。すごくいいなって。大きな海にポツンと船浮かべてさ。風にまかせて進んでいく…みたいな。でも、自分が同じことできるかなって考えたら、…やっぱできないよ。

カイゾク でもミサキは、海が好きなんだろ。

ミサキ  海は好きだけど…。

カイゾク じゃあいいじゃん。

ミサキ  いいって?

カイゾク それでいいじゃん。別に自信とかなくってもさ。

ミサキ  でも、それじゃ、カイゾクっぽくないよ。そんなカイゾク変だよ。カイゾクっていうのは、もっとカイゾクさんみたいに、強くないと…。

カイゾク そうでもないよ。

ミサキ  エッ?

カイゾク いろんなやついるもん、カイゾクにも。

ミサキ  そうなの?

カイゾク (大きくうなずき)海が荒れたりとかするとさ、ビビって船底でガタガタふるえてるヤツだっているし、必ず、母親に遺書書くヤツもいるなぁ〜。船が沈んだら、誰が届けるんだって話なんだけどね。あと、気持ち悪くなってフラフラになってるヤツだっているし、泣きながら「怖くねぇぞぉ〜」とか叫んだりするのもいるよ。でもさぁ、そんなのいいんだよ。カッコ悪くったって、弱虫だって、見苦しくったって。スーパーマンじゃないんだもん。

ミサキ  ふ〜ん…。そうなんだ…。

カイゾク けど、カイゾクはさぁ、波が高いからって海を恨んだりしない。それだけはしないんだ。それがカイゾクってもんさ。

ミサキ  海を恨まない…。(間。ピンときた感じで)そっか。そうだよね。

カイゾク そういうこと。だから、海が好きなミサキなら、絶対やってけるって。一緒に行こうぜ。

消防車のサイレン。

カイゾク オオッ! また何か来やがったな。

ミサキ  (窓の外を見て)消防車だ。…救急車も。何だかいっぱい来てるよ。

カイゾク ますます血が騒ぐ。

ミサキ  もう。呑気なんだから…。このままだと、つかまっちゃうかもよ。

カイゾク それはない。

ミサキ  どうして?

カイゾク さっき、ミサキ言ったろ。カイゾクは自由だって。

ミサキ  うん。

カイゾク だったら、カイグンのやつらがいくらしゃかりきになったって、オレたちは絶対つかまらない。あいつらに自由はつかまえられないもの。たぶん永遠に。

ミサキ  そっか。自由はつかまえられないか。

カイゾク アア。…そのくせ、必死に追いかけてくるんだよな。バカみたいに。

ミサキ  何でそんなにしつこいんだろね。

カイゾク あこがれてんじゃない。ホントはカイゾクになりたいんだよ。やつらだって。

ミサキ  そっか。

突然、激しい雨の音。

続いてカミナリ。

ドーンという音。

ミサキ  キャッ!

カイゾク (空を見上げ)これからってところで、お迎えか。

ミサキ  お迎えって…。

カイゾク 船。ホラ、あそこに。

カイゾク、空を指さす。

ミサキ、立ち上がって。

ミサキ  アッ!

カイゾク 見えるだろ。

ミサキ  うん。

カイゾク オレ行くけど。ミサキどうする?

ミサキ  うん。…私、ここに残ることにする。

カイゾク 残る?

ミサキ  うん。カイゾクさんと一緒に行きたいけど、今、ここから出て行くのは、逃げることだって気がするから。

カイゾク …そっか。そうかもな。

ミサキ  カッコ悪くても、弱虫でもいいんでしょ。

カイゾク アア。

ミサキ  カイゾクは海を恨まないんだよね。

カイゾク アア。

ミサキ  私もカイゾクだよね。

カイゾク アア、立派なカイゾクさ。

ミサキ  だったら、ここで思いっきり暴れてやる。今はここが私の海だもん。私、そうする!

間。

カイゾク わかった。元気でな。

ミサキ  うん。会えてよかった。

ドーンという、ひときわ大きな雷鳴。

真っ暗になる。

////////////////////

うっすらと明るくなっていく。

机やイスで作ったバリケード、壊れている。

中央にミサキ。ゆっくりと立ち上がって。

ミサキ  カイゾクさん…。(あたりを見回し)行っちゃったんだ。

ふと、落ちている雑誌に気づき、拾い上げ。

ミサキ  アッ、これ。(遠くに呼びかけるように)カイゾクさーん。これ、いらないのォ〜。

間。

ミサキ  …いらないか。自分の宝物は自分で見つけるよね。カイゾクさんなら。

上手より、警官A・B、続いて教師A駆け込んでくる。

警官A  ケガはないか!

ミサキ  アッ、ハイ。

教師A  大丈夫? ミサキさん!

ミサキ  大丈夫です。

教師A  よかった。ホントによかった…。

教師A、ミサキを抱きしめる。

警官A・B、部屋の中を確認。

警官B  犯人が見あたりません!

警官A  そんなはずはない。そっちはどうだ?

警官B  (下手のほうを探し)いえ。いません。

警官A  バカな…。窓の外は固めてあるし、出口はここだけ…。絶対逃げられるはずはない…。(ミサキに)キミ、犯人がどっちに行ったか知らないか?

ミサキ  …それは言えません。

警官A  

教師A  どうしたのミサキさん。どういうこと?

ミサキ  (ニッコリと)私もカイゾクのはしくれですから。

遠くで、雷鳴。

ミサキ、うなずく。(幕)

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