●4人 ●20分程度
●あらすじ
トレジャーハンターの3人が遺跡の中に。そこには古代の王の墓があって…。*教室など小さな会場向きの台本です。新歓公演や新人公演、練習用にどうぞ。〈箱一つバージョン〉よりも〈箱三つバージョン〉のほうが上演時間が長く、遊びが多くなっていますが大差はありません。
●キャスト
男①
男②
男③
男④
●台本(全文)
薄暗い。
舞台中央に箱。人が横になって入れるほどの大きさ。
外側には象形文字のようなものが一面に描かれている。
ギギィ〜というトビラが開く音がして…。
男①②③、床や天井をライトで照らしつつ会場奥から登場。
調査隊風の衣装。
男② なんか、ここが王の部屋っぽくないですか?
男① (男③に)どう思う?
男③ 私もそう思います。おそらくここが遺跡の最上部、すなわち伝説の王、ロンリコサムサムが眠っている場所かと…。
男① よし、慎重にいこう…。
三人、ゆっくりと進んでいく。
男② (急に大声で)隊長!
男① なんだよ! コワイよ、もう。
男② スミマセン。…あれを見て下さい。
男②、客席のお客さんたちを照らす。
男①③ オオッ!
男③ あ、あれは石像! しかもあんなに!
男② ほぼ、満席じゃありませんか。
男① マンセキ?
男② あっ、いや、満杯っていうか…ぎっしり並んでます!
男③ これだけの数の石像に守られている人物…。間違いない。伝説の王、ロンリコサムサムはここにいる…。
男① とすると、どこかに棺があるはずだが…。
男②、石像(お客さん)が気になっている様子。
男② (石像に近づき)それにしても、よく出来てるなぁ…。
男③ まるで生きているみたいですね。
男② …触っちゃおうかな。
男③ いいんですかね。
男② 誰も見てないよ。
男②、お客さんに近づきチョッカイを出す…。
男① イヤ、ダメだろ。それは。
男② エ〜。じゃあ、写真だけでも。
男① まぁ、写真くらいなら……。
男②、お客さんの横に。
男② (男③に)一緒に撮ろうぜ。(男①にカメラを渡し)シャッターお願いします。
男① オレが撮んのかよ。…ったく。
男② (お客さんに)あとで送るからね。
男③ (お客さんの横に並んで)Twitterにあげてもイイ。
男② (お客さんに)イイよね。
男① だったらオレも撮りたいよ…。
男② 撮ればイイじゃん。
男① でもさぁ、ハナシ進まなくない?
男③ ああ、それもそうですね。あまり押せ押せになると…。
男② しょうがないか…。(お客さんに)じゃあね♡
男① よし。気持ち切り替えていくぞ。
男②③ ラジャ。
男① というわけで、…エ〜ッと、棺、棺…と。
男② (舞台中央の箱を指さし)あっ、あれじゃない?
男③ あれですよ、あれ。絶対あれだ。
男①②③、舞台中央に駆け寄る。
男① フタを開けてみよう。
男③ 緊張の一瞬ですね。
男② ツタンカーメンみたいだったらどうする?
男① 黄金のマスク、とか?
男② そうそう。時価数百億円とか。
男③ 数百億!
男② でもって、ツタンカーメンの呪いみたいなのがあって…。
男③ どうなるんですか!
男② 隊長が遺跡を出た瞬間、毒蛇に噛まれて即死。とか。
男③ ヒェ〜。超絶コワイじゃないですか。
男② それどころか、隊長の親類縁者も次々と…。
男③ それもやっぱり毒蛇ですか。
男② ああ。しかもヘビだけじゃ手がたりないんで、毒グモの応援に来てさぁ、もう地獄絵図だよ。
男③ なるほど。ヘビだけに手がたりないんだ。
男② そういうこと。
男③ 恐るべし、王の呪い…。
男① …オイ。
男③ 隊長、お気の毒です!
男① 毒だけにお気の「毒」ってか。
男② さすが、隊長!
男① お前たち…。
男②③ はい。
男① 気がすんだか?
男② まだ広げられそうですが…。
男③ 押せ押せになっちゃいますもんね。
男① わかったら、さっさと(箱を指さし)そっちを持て。(男③に)お前はそっち。
男①②③、箱のフタに手をかけ、重そうに持ち上げる。
三人で せーの。せーの。せーの。おりゃ〜!
箱のフタとれる。
三人 オ〜ッ!
間。
三人 何もない…。
男① 盗掘か…。
男② やられた…。
男③ 数百億が…。シクシク。
男① クソっ!
足音。舞台ソデより男④、歌いつつ登場。
男④ ♪一年生になったら 一年生になったら ともだち百人 できるかな 百人で 笑いたい 世界中を ふるわせて ワッハハ ワッハハ ワッハッハ
男① なんだよ、アイツ。
男③ ゴキゲンですね。
男② テンション高すぎ。毒キノコでも食べたんじゃ…。
男④、三人を見つけて。
男④ アッ。遊びに来てくれたの?
男① ハァ?
男④ お友達になってくれるんでしょ?
男① 誰だよ、お前。
男④ アッ、ボク。ボク王様。
男① オ、
男② オ(ウ)、
男③ サ、
三人で マ。
男④、うなずく。
男① ふざけんな。
男④ ふざけてないよ。
男① (男②に)どう思う。
男② 遺跡に住みついてるホームレスとか。
男③ でも、若そうですよ。
男② じゃあ、このあたりの原住民の子供とか…。
男③ 遺跡を遊び場にしてるってことですか。
男① あり得るな。(男④に)オイ。
男④ なに?
男① お前、いつもここで遊んでんのか。
男④ うん。
男① ああ、やっぱり…。あのさぁ、ここ、遺跡だからさぁ、遊んじゃだめじゃん。家に帰れよ。
男④ 家はここさ。
男① バーカ。ここはな、ロンリコサムサム王の墓なんだよ。
男④ よく知ってるね、ボクのこと。
男① めんどくさいヤツだな…。(男③に)なんとかしろよ。
男③ (うなずいて)あのさぁ、ボク。ひょっとして、自分のことロンリコサムサム王だとか思ってるわけ?
男④、うなずく。
男③ アーそうなんだぁ。でもさぁ、サムサム王って、ロンゴボンゴ王朝最後の王で、三千五百年前に亡くなってるんだよね。
男④ そうだよ。
男③ 記録によると、若干三歳で即位したんだけど、王家の内紛に巻き込まれて七歳で死亡…。
男④ そうそう。ホント、ひどいよね。
男③、男①に。
男③ どうやら、本物ですね。
男① ハナシ合わせてるだけじゃんかよ。
男② 王様に関する問題を出すってどうです。王様なら答えられるはずでしょ。
男① なるほど。
男③ 王様ゲームってことですか。
男① それは違う。気持ちを落ち着けろ。
男③ あっ、ハイ。(深呼吸)
男② (男④に)では、第一問。ロンリコ王が好きだった食べ物は?
男④ どら焼き。
男① (男②に)合ってるのか?
男② さぁ…。
男① お前なぁ…。
男③ (手を上げて)オレ、やります! 第二問。ロンリコ王が一番大切にしてたものはな〜んだ?
男④ 友情かな。
男① 友情? (男③に)合ってるのか?
男③ (資料を見ながら)そんな記録はありませんが…絶対間違ってるとも言えないような…。
男① もういい。(男④に)友情が一番大切ってことは、友達いたわけだよな。そいつの名前言ってみろ。
男④ …友達はいなかった。
男① おかしいだろ! 友達がいないのに友情が一番って。
男④ 世界が平和でなくても平和が一番だと言って何がいけないの? 同じことでしょ。
男① ムムムムム…。このクソガキ…。 お前あれだろ。貧乏人の子供で、この遺跡のお宝とか勝手に持ちだして、それで生活してんだろ。
男④ それは違うかも。
男② じゃあ、何のためにここに出入りしてるわけ?
男③ 許可とかもらってんの?
男④ キョカ?
男① やめとけ。どーせ、「ボクは王様だからここにいるわけで、王様だから許可なんかとる必要ないんだよ…」とか言うんだよ、コイツは。
男④ スゴイ! 大正解! ねぇ、友達になってよ。
男① 友達?
男④ うん。
男① 特典は?
男④ 友達っていうのは、損得でなるもんじゃないよ。
男② この子、ときどき鋭い…。
男③ さすが王様だ…。
男①、男③をにらむ。
男③ スミマセン…。
男① もういい。オレが質問する。(男④に)やい!
男④ 何?
男① 第三問。ロンリコ王の宝はどこにある? 答えろ!
男④ (箱を指さし)ここに書いてあるじゃん。
男③ ここ…。(箱の側面を見て)これは古代ナンダラ文字。(男①に)…まだ解読されてません。
男① (男④に)お前、これが読めるのか?
男④ 読めるよ。
男① じゃあ、読んでみろ。
男④ いいよ。
男① (男③に)録音!
男③ ハイ。
男① (男④に)さぁ、読め! 早く!
男④、箱に近づき、文字を読み始める。
男④ ロンゴボンゴの子はビンゴボンゴ。ビンゴボンゴの子はボンゴボンゴビンゴ。ボンゴボンゴビンゴの子はビンビンビンゴで、そのまた子供がビンボンバンバン。ビンボンバンバンの子が…。
男① ストーップ!
男④ 何?
男① このクダリ、あとどれくらい続くんだ?
男④ 初代ロンゴボンゴから数えてボクが65代目だから、エ〜ッと、あと60人くらいかな…。
男① そこは端折って、お宝に関係するところから読んでくれないか。
男④ いいよ。じゃあ、ボクのお父さんのところから読むね。(箱の反対側に移動して)ロンリコパッパの子供がロンリコサムサム。ロンリコサムサムは丸い目の可愛い王子だったが、三歳の時、ロンリコパッパが叔父のドンドコドンドンに殺された。ロンリコサムサムは三歳で王となったが、ドンドコドンドンはすぐにサムサム王を囚え、暗い地下牢に閉じ込めた。それから四年間、サムサムは太陽を見ることがなかった。四年間、サムサムは月も星も見ることがなかった。サムサムは誰とも話しをしなかった。サムサムは一人ぼっち。サムサムは友達を知らない。サムサムには友達がいない。…四年目。ボンボン草の咲く月。ドンドコドンドンが殺され、サムサムは地下牢から出ることが出来た。けれども、その時、サムサムの心臓は動いていなかった。可哀想なサムサムのために、この墓を建てる。サムサムに友達がたくさん出来るようにこの墓を建てる。
…エンリコ エンリコ ギャッパ ギョッペ
…エンリコ エンリコ ギャッパ ギョッペ
この呪文を聴く者、永遠にサムサムのしもべとなるべし。サムサムのためにサムサムのそばにひかえるべし。サムサムが悲しまぬよう、いつまでも友として。
男①②③、体調に異変をきたしはじめる。
男③ 頭が…。
男② めまいがする…。
男① (男④に)やめろ! やめるんだ!
男④ (読み続ける)…サムサム王の唯一の望みは友達。サムサム王にとっての宝は友達。…友達は王の宝なり。
…エンリコ エンリコ ギャッパ ギョッペ
…エンリコ エンリコ ギャッパ ギョッペ
男① やめろ! やめてくれ!
暗くなる。キーンという音。
やがて、音が小さくなり、ゆっくりと明るくなる。
男①②③、石像のように固まり、男④の周りにかしずくように座っている。
男④ …って書いてあるんだよ。わかった? だから三人とも今日からボクの友達だよ。
三人 (無表情で)ハイ。王様。
男④ じゃあ、そのあたりに座って。
三人 (無表情で)ハイ。王様。
男①②③、ゆっくりと立ち上がり、客席に移動して座る。
男④ じゃあ、ボク、ちょっと遊んでくるからね。
三人 (無表情で)ハイ。王様。
男④ソデに消える。
暗くなって、間。
遠くから複数の人の声。
「もうすぐだぞ」
「足元に気をつけろ」
「ツタンカーメン級のお宝があったりしますかね」
「黄金のマスク、とか?」
「そうそう。時価数百億円とか」
「数百億!」
「でもって、ツタンカーメンの呪いみたいなのがあって…」
「バカ。ふざけんな…」
「ハッハッハッ…」
足音、人の気配、次第に大きくなる。
ギギィ〜とトビラが開く音がして…。
(幕)