●4人 ●25〜30分程度
●あらすじ
トレジャーハンターの3人が遺跡の中に。そこには古代の王の墓があって…。*教室など小さな会場向きの台本です。新歓公演や新人公演、練習用にどうぞ。〈箱一つバージョン〉よりも〈箱三つバージョン〉のほうが上演時間が長く、遊びが多くなっていますが大差はありません。
●キャスト
男①
男②
男③
男④
●台本(全文)
薄暗い。
舞台中央に小さな箱が3つ。象形文字のようなものがびっしりと書かれた敷物の上に。
ギギィ〜というトビラが開く音がして…。
男①②③、床や天井をライトで照らしつつ会場奥から登場。
調査隊風の衣装。
男② なんか、ここが王の部屋っぽくないですか?
男① (男③に)どう思う?
男③ 私もそう思います。おそらくここが遺跡の最上部、すなわち伝説の王、ロンリコサムサムが眠っている場所かと…。
男① よし、慎重にいこう…。
三人、ゆっくりと進んでいく。
男② (急に大声で)隊長!
男① なんだよ! コワイよ、もう。
男② スミマセン。…あれを見て下さいよ。
男②、客席のお客さんたちを照らす。
男①③ オオッ!
男③ あ、あれは石像! しかもあんなに!
男② ほぼ、満席じゃありませんか。
男① マンセキ?
男② あっ、いや、満杯っていうか…ぎっしり並んでます!
男③ (興奮気味に)これだけの数の石像に守られている人物…。間違いない。伝説の王、ロンリコサムサムはここにいる…。
男① とすると、どこかに棺があるはずだが…。
男②、石像(お客さん)が気になっている様子。
男② (石像に近づき)それにしても、よく出来てるなぁ…。
男③ まるで生きているみたいですね。
男② しかも美人ぞろいだ。
男②、ふと足をとめ、お客さんのひとりに近づき。
男② 大好きだよ、僕だけのお姫様。
男③ ウワッ!石像になに話しかけてるんですか。
男② イヤ、元カノにすごく似てたんでつい…。
男③ エ〜そうなんだ。で、その人、今、どうしてるんですか?
男② さあなぁ…オレたちとおんなじトレジャーハンターでさ、あるお宝探しのプロジェクトで一緒になったのがきっかけで付き合ったんだけど…。今頃どうしてんのかなぁ〜。もう一度会いたいなぁ〜。
男③ 会えるとイイですね。
男② (しんみりと)うん。
男③ ここでバッタリとか。
男② アッ、あるね、それ。あるある!彼女って女性としてだけでなく、トレジャーハンターとしても一流だからさ、この山、ほっておくような人じゃないよ。
男① オイ。
男②③ ハイ?
男① (男②に)お前の元カノだけじゃなく、ロンリコ王のお宝は世界中のトレジャーハンターが狙ってるんだ。もしホントに先を越されたらどうすんだよ。
男③ ああ、それもそうですね。みんなライバルですよね。
男② 愛をとるか、仕事をとるか…。う〜ん。しょうがないか…。(お客さんに)ちゃんと静かに座っててね。じゃあね、バイバイ♡
男① よし。気持ち切り替えていくぞ。
男②③ ラジャ。
男① というわけで、…エ〜ッと、棺、棺…と。
男② (舞台中央の箱を指さし)あっ、あれじゃない?
男③ あれですよ、あれ。絶対あれだ。
男①②③、舞台中央に駆け寄る。
男① (箱を見て)なんか小さくないか?
男③ でも、ロンリコサムサムは確か子供でしたから…。
男① それにしても小さすぎるだろ。
男② しかも箱が三つってどういうこと?
男③ 頭、胴体、足、とか?
男② キモ!お前、キモいよ。
男③ じゃあ、右半分、左半分、残り、とか。
男② 残りってなんだよ。もういいよ。隊長、ほかを探しましょう。
男① イヤ、待て。(腕組みをしつつ)棺があると決めつけてたオレたちのほうがおかしいんじゃないか。
男② どういうことですか?
男① 当時、王の亡骸(なきがら)を保存しておくという風習があったと、どうして言える?
男③ (手帳を取り出し)確かに、ロンゴボンゴ王朝の時代、「永遠の命」という考えはありましたが、今で言うところの「死者」という概念はなかったとされています。つまり、ロンリコサムサムの命は肉体を離れただけで、この墓の中で生き続けている。だから命が抜け出たあとの肉体そのものを保存する意味はない…そういうことですね!
男① ああ…。
男② じゃあ、お宝はない…ってことですか?
男① イヤ、それも違うな。ロンリコ王はこの墓で眠っているんじゃなく、この墓の中で生き続けているわけだから、むしろ生きていた時と同じような宝飾・宝物があると考えたほうが自然じゃないか。
男③ 私もそう思います!
男② ああ、オレ、興奮してきた。
男① とにかく箱を開けてみよう。
男③ 緊張の一瞬ですね。
男② (男③に)ツタンカーメン級だったらどうする?
男③ 黄金のマスク、とかですか?
男② そうそう。時価数百億円とか。
男③ 数百億!
男② でもって、ツタンカーメンの呪いみたいなのがあって…。
男③ どうなるんですか!
男② 隊長が箱を開けた瞬間、中から飛び出た毒蛇に噛まれて即死。とか。
男③ ヒェ〜。超絶コワイじゃないですか。
男② あるいは…。
男③ あるいは…何です?
男② 隊長が箱を開けた瞬間、中から飛び出た毒サソリに刺されて即死。とか。
男③ ヒェ〜。やっぱり即死!超絶コワイじゃないですか。
男② あるいは…。
男③ あるいは…何です?
男② 隊長が箱を開けた瞬間、中から飛び出た毒蛇と毒サソリにダブルでやられて超即死。とか。
男③ ヒェ〜。超即死!
男① …オイ。
男③ 隊長、お気の毒です!
男① 毒だけにお気の「毒」ってか。
男② うまい!隊長に座布団一枚!
男① お前たち…。
男②③ はい。
男① 気がすんだか?
男② まだ広げられそうですが…。
男③ 押せ押せになっちゃいますもんね。
男① わかったら、さっさと(箱を指さし)開けろ。
男② あれっ、隊長、開けないんですか?
男③ ひょっとして、開けるのがコワイとか?
男① そんなわけあるか!(箱を指さし)だったら、それよこせ。
男①、箱をひとつ手に取る。
男② 毒蛇かもよぉ〜。
男①、男②をにらむ。
男③ 病院の手配しておきましょうか?
男① …ふざけんな。たとえ毒蛇が飛び出してきたとしてもだ…。…あるいはまた、毒サソリが飛び出してきたとしてもだ…。…つまり、オレは隊長なわけだから、ここはなんとしても勇気を出して…。
男② マジで怖がってる…。
男③ じゃあ、ボク開けます。
男③、男①から箱をとって開ける。男③、箱の中を覗き込み。
男③ オオッ!コレは!
男①②なんだ?
男③ ◯◯◯◯(男①役の人の本名or芸名)の生写真です。
男② ハァ?どれどれ。(写真を手に取り)あっ、ホントだ。◯◯◯◯の生写真だ。
男③ ハズレでしたね。
男② アア。大ハズレだな。
男③ 捨てますか。
男② 捨てよう。
男②、◯◯◯◯の写真を客席に投げる。
男① キミたち。
男②③ ハイ。
男① あれは当たりじゃないの?
男③ ハズレです。
男② 大ハズレ。
男① マジかよ…。じゃ、次の箱開けてみて。
男③ わかりました。
男③、もうひとつの箱を開ける。
男③ オオッ!コレは!
男①②なんだ?
男③ ◯◯◯◯のサイン入りTシャツ!
男① 大当たりじゃないか!
男③ イエ、これもハズレですね。
男② これはいらないよ。趣味が悪すぎる。せめてサインがなければなぁ…。
男③ (男②に)どうします?
男② 廃棄!
男① オイ、待てよ。
男② 処分!
男③ ラジャ!
男③、Tシャツを客席に投げる。
男② さてと、残りはひとつか…。
男③ 最後は当たりが出てほしいですね。
男② もうこれ以上、イヤな思いはしたくないもんね。
男① お前らなぁ…。まっ、いいや、最後の開けてみて。
男③ ラジャ。
男③、三つ目の箱を開ける。
箱を開けると音楽が流れる。
男①②なんだ?
男③ なんでしょう。
男③、フタを閉める。音楽とまる。
もう一度、フタを開けると、再び音楽が流れる。
男③ オルゴールのようなものですね。
男① どういうこと?
男② たぶん、アレでしょう。ハズレが続いたんで、最後はちゃんとしたプレゼントをするようにっていう、制作サイドのメッセージじゃないかな。
男③ ああ、ミュージカルの演出みたいな感じですね。
男① つまり?
男② こういうこと。
男③、フタを開ける。ダンスの音楽が流れる。
男①②③、ダンスorパフォーマンス。(何か得意なものを披露)
しばらくして、音楽終わる。
男③ イヤァ〜。いい汗かきました。
男② スッキリしたね。
男① まぁな。(間)…ところで。
男② 結局、お宝はなかったみたいだけど。
男① ここまで来て、空振りってことか…。
男③ 数百億円が…。シクシク。
男② なんだよ、ったく。
短い間。
足音。舞台ソデより男④、歌いつつ登場。
男④ ♪一年生になったら 一年生になったら ともだち百人 できるかな 百人で 笑いたい 世界中を ふるわせて ワッハハ ワッハハ ワッハッハ
男① なんだよ、アイツ。
男③ ゴキゲンですね。
男② テンション高すぎ。毒キノコでも食べたんじゃ…。
男④、三人を見つけて。
男④ アッ。遊びに来てくれたの?
男① ハァ?
男④ お友達になってくれるんでしょ?
男① 誰だよ、お前。
男④ アッ、ボク。ボク王様。
男① オ、
男② オ(ウ)、
男③ サ、
三人で マ。
男④、うなずく。
男① ふざけんな。
男④ ふざけてないよ。
男① (男②に)どう思う。
男② 遺跡に住みついてるホームレスとか。
男③ でも、若そうですよ。
男② じゃあ、このあたりの原住民の子供とか…。
男③ 遺跡を遊び場にしてるってことですか。
男① あり得るな。(男④に)オイ。
男④ なに?
男① お前、いつもここで遊んでんのか。
男④ うん。
男① ああ、やっぱり…。あのさぁ、ここ、遺跡だからさぁ、遊んじゃだめじゃん。家に帰れよ。
男④ 家はここさ。
男① 何言ってんだよ。ここはな、ロンリコサムサム王の…。
男④ よく知ってるね、ボクのこと。
男① めんどくさいヤツだな…。(男③に)なんとかしろよ。
男③ (うなずいて)あのさぁ、ボク。ひょっとして、自分のことロンリコサムサム王だとか思ってるわけ?
男④、うなずく。
男③ アーそうなんだぁ。でもさぁ、サムサム王って、ロンゴボンゴ王朝最後の王で、三千五百年前に亡くなってるんだよね。
男④ そうだよ。
男③ 記録によると、わずか三歳で即位したんだけど、王家の内紛に巻き込まれて七歳で死亡…。
男④ そうそう。ホント、ひどいよね。
男③ (男①に)どうやら、本物ですね。
男① ハナシ合わせてるだけじゃんかよ。
男② 王様に関する問題を出すってどうです。王様なら答えられるはずでしょ。
男① なるほど。
男③ 王様ゲームってことですか。
男① それは違う。気持ちを落ち着けろ。
男③ あっ、ハイ。(深呼吸)
男② (男④に)では、第一問。ロンリコ王が好きだった食べ物は?
男④ どら焼き。
男① (男②に)合ってるのか?
男② さぁ…。
男① お前なぁ…。
男③ (手を上げて)オレ、やります! 第二問。ロンリコ王が一番大切にしてたものはな〜んだ?
男④ 友情かな。
男① 友情? (男③に)合ってるのか?
男③ (手帳を見ながら)そんな記録はありませんが…絶対間違ってるとも言えないような…。
男① もういい。(男④に)友情が一番大切ってことは、友達がいたわけだよな。そいつの名前言ってみろ。
男④ …友達はいなかった。
男① おかしいだろ! 友達がいないのに友情が一番って。
男④ 世界が平和でなくても平和が一番だと言って何がいけないの? 同じことでしょ。
男① ムムムムム…。お前あれだろ。貧乏人の子供で、この遺跡のお宝とか勝手に持ちだして、それで生活してんだろ。
男④ それは違うかも。
男② じゃあ、何のためにここに出入りしてるわけ?
男③ 許可とかもらってんの?
男④ キョカ?
男① やめとけ。どーせ、「ボクは王様だからここにいるわけで、王様だから許可なんかとる必要ないんだよ…」とか言うんだよ、コイツは。
男④ スゴイ! 大正解! ねぇ、友達になってよ。
男① 友達?
男④ うん。
男① 特典は?
男④ 友達っていうのは、損得でなるもんじゃないよ。
男② この子、ときどき鋭い…。
男③ さすが王様だ…。
男①、男③をにらむ。
男③ スミマセン…。
男① もういい。オレが質問する。(男④に)やい!
男④ 何?
男① 第三問。ロンリコ王の宝はどこにある? 答えろ!
男④ (敷物を指さし)ここに書いてあるじゃん。
男③ ここ…。(敷物の文字を見て)こっ、これは古代ナンダラ文字。
男① なんだと!(男③に)読んでみろ!
男③ (男①に)ナンダラ文字は…まだ解読されてません。
男① なにぃ〜。(男④に)お前、ひょっとして、これが読めるのか?
男④ 読めるよ。
男① じゃあ、読んでみろ。
男④ いいよ。
男① (男③に)録音!
男③ ハイ。
男① (男④に)さぁ、読め! 早く!
男④、敷物を手に取り、文字を読み始める。
男④ ロンゴボンゴの子はビンゴボンゴ。ビンゴボンゴの子はボンゴボンゴビンゴ。ボンゴボンゴビンゴの子はビンビンビンゴで、そのまた子供がビンボンバンバン。ビンボンバンバンの子が…。
男① ストーップ!
男④ 何?
男① このクダリ、あとどれくらい続くんだ?
男④ 初代ロンゴボンゴから数えてボクが65代目だから、エ〜ッと、あと60人くらいかな…。
男① そこは端折って、お宝に関係するところから読んでくれないか。
男④ いいよ。じゃあ、ボクのお父さんのところから読むね。(敷物の別の場所に目をずらして)ロンリコパッパの子供がロンリコサムサム。ロンリコサムサムは丸い目の可愛い王子だったが、三歳の時、ロンリコパッパが叔父のドンドコドンドンに殺された。ロンリコサムサムは三歳で王となったが、ドンドコドンドンはすぐにサムサム王を囚え、暗い地下牢に閉じ込めた。それから四年間、サムサムは太陽を見ることがなかった。四年間、サムサムは月も星も見ることがなかった。サムサムは誰とも話しをしなかった。サムサムは一人ぼっち。サムサムは友達を知らない。サムサムには友達がいない。…四年目。ボンボン草の咲く頃。ドンドコドンドンが殺され、サムサムは地下牢から出ることが出来た。けれども、その時、サムサムの心臓は動いていなかった。可哀想なサムサムのために、この墓を建てる。サムサムに友達がたくさん出来るようにこの墓を建てる。
…エンリコ エンリコ ギャッパ ギョッペ
…エンリコ エンリコ ギャッパ ギョッペ
この呪文を聴く者、永遠にサムサムのしもべとなるべし。サムサムのためにサムサムのそばにひかえるべし。サムサムが悲しまぬよう、いつまでも友として。
男①②③、体調に異変をきたしはじめる。
男① ウウッ…頭が…。めまいがする…。
男② 足が…。足が動かない…。
男③ 体がしびれる…。
男① なんなんだこれは…。
男② 隊長!もう駄目です。引き返しましょう!
男① 全員、出口に急げ…。
男③ 無理です。体が石のように重くて…。
男③、倒れる。
男② クソっ。ふざけんな…。
男②も倒れる。
男① なんなんだよ一体…。…まっ…まさか…呪い?お前一体…。…やめろ!やめるんだ!
男④ (読み続ける)…サムサム王の唯一の望みは友達。サムサム王にとっての宝は友達。…友達は王の宝なり。
…エンリコ エンリコ ギャッパ ギョッペ
…エンリコ エンリコ ギャッパ ギョッペ
男① やめろ! やめてくれ!
男①、倒れる。
暗くなって、キーンという音。
やがて、音が小さくなり、ゆっくりと明るくなる。
男①②③、石像のように固まり、男④の周りにかしずくように座っている。
男④ …って書いてあるんだよ。わかった? だから三人とも今日からボクの友達だよ。
三人 (無表情で)ハイ。王様。
男④ じゃあ、そのあたりに座って。
三人 (無表情で)ハイ。王様。
男①②③、ゆっくりと立ち上がり、客席側に移動して座る。
(男②はできれば最初に話しかけたお客さんの横に)
男④ じゃあ、ボク、ちょっと遊んでくるからね。
三人 (無表情で)ハイ。王様。
男④、去る。
間。
ややあって、遠くから複数の人の声。
「もうすぐだぞ」
「足元に気をつけろ」
「ツタンカーメン級のお宝があったりしますかね」
「黄金のマスク、とか?」
「そうそう。時価数百億円とか」
「数百億!」
「でもって、ツタンカーメンの呪いみたいなのがあって…」
「呪いもツタンカーメン級だったりして」
「ふざけんなよ」
「ハッハッハッ…」
階段を上がってくる足音、人の気配、次第に大きくなる。
ギギィ〜とトビラが開く音がして…。
(幕)